日常に戻る
「ええ!?学年五十位に入った!?」
母の声が耳に刺さる。
「おー優斗やったじゃないか」
父は割とあっさりしている。
「なんとか目標には届いたよギリギリ……」
「ギリギリだなんてそんな!優斗凄いじゃない!」
「私の時はそんなに喜ばなかったじゃないの」
「だって茜はトップらへんで動きなかったし……優斗みたいに凄い伸びた実感があるからね」
「一応私の方が凄いんだけどなぁ」
姉は膨れてる。
だが、ここまで喜んでくれるのは思ってなかった。
裏を返せばそこまで期待が無かったのかもしれない証なんだが……
「とりあえず、維持出来るように頑張るよ」
「うんうん、次の懇談が楽しみねー」
テスト結果が出て待ち受けるのは懇談、まだ一年の二学期だが少しずつ進路の話で固められていく。
その進路の方向を決める為にも、今回頑張ったのだ。
進学にしろ就職にしろ選択肢が多い方が良い。
頭では分かるが世の中の高校生で、真剣に決まってる者は少ないはずだ。
「ところでアンタ皆を呼ぶの土曜日だったでしょ?」
「え?うん」
「アタシが接客担当するからね」
「え!」
「何がえ!よ」
福羽はともかく、鹿島さん達アントガールズに囲まれる姿を姉に間近で見られるのか……少し気が遠くなる。
「何で姉ちゃんが……?」
「普通にアンタ達が被ったのよ!詩華ちゃんとお友達は良いけど男達はやれる事は自分でやりなさいよ」
中々の暴君っぷりを見せる姉だが、いざ始まればちゃんとする……はずなので頷いておく。
(しかし、お疲れ様会に場所提供する身だしスタッフにも何か用意した方が良いんだろうか?身内だからと甘えすぎるのもよろしく無い)
自分の中で少し何かをするかと湧き上がってきた。
——翌日。
「おはよう」
「おはよう!柊聞いてくれよ」
朝から福羽がうるさいが、この感じは良い事があったようだ。
「ついにバイトを探す許可が出たぜ!」
「おお、約束だったもんな」
「親父もお袋も最初結果見せたら信じなくてなぁ……」
福羽は遠くを見る、これまでの結果のせいだろう。
「でも、次期末落としたら偶然かと落胆されそうだな」
「……そうならないように努力はするぞ?」
一応そうなったらやばい事は理解しているようだ。
「でも、いざバイトを探すとなると迷うもんだな」
「いや、自分は自分家の店だから……」
「あー柊はそうだもんな、応募とか面接とか多分緊張するぞ」
確かに一般的な面接は経験していない、どんな事を聞かれたり面接の空気感だったりはアドバイスも出来ない。
これが家族経営の弊害かと思える。
どこまで行っても「店の子」のフィルターが掛かるので、やりやすいようでやりにくい。
「福羽はどんな事やりたいってあるのか?」
「ん〜出来ればちょっと珍しい事やりたいな」
「珍しい?」
「チェーン店とかは安定だけど、やれるならこの歳で珍しいなそれって事かな」
「よくわからんが……個人店とか特殊業務?」
「そうそう、あまり知られてなさそうな仕事?……ただこの歳だからこそ、そんなのほぼ無いんだけどな」
福羽に合ったバイト、彼の個性なら人と関わる仕事だろう。
「何の話?」
パッと鹿島さんが入ってきた。
「いや、福羽がバイトを何にしようかって」
「そうだね〜人と関わる仕事が向いてると思う!」
同じ意見が出た。
やはりそう見えるのだろう、ムードメーカーで人見知りしないのは才能だろう。
「まあ探す許可は出たしじっくり探すさ!」
「とりあえず結果を出せたから掴めたな、おめでとう」
「二人共頑張ってたもんね、ところで柊君のつむぎ亭に差し入れって大丈夫かな?うちのメンバーが聞いてきてて」
「店に?ありがたい事だけど……良いの?」
「勿論!お邪魔させてもらうんだし!」
どちらかと言うとお客様なんだが、本人達の想いも無下には出来ない。
むしろそれに乗っからせて貰おうと考える。
「自分も参加していいかな?」
「柊君自分家のお店に差し入れするの?」
「こんな時じゃないと機会がないしね」
「それじゃあ俺も乗っかる」
福羽も同意した。
「お金は渡すから女子達で選んでくれたらありがたいな」
「うん、わかった!六人まとめてならそれなりの物用意出来そうだね、選んで持ってくよ」
鹿島さん達には助けられる、差し入れ選びにまで時間を合わすのは難しい。
「席付けよ〜」
担任の入室と共に皆が散る。
テスト期間が終わりしばらくは日常が戻る。
「勉強しながらバイト頑張りますか」
窓の空を見て思った。




