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紡ぎ紡がれこの店で  作者: かずや


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110/197

トップ層の競い合い


 ——週が明けた

 本日最後のテストが返り、昼休みには成績上位者の張り出しもされる。

 個人毎に順位表が渡されるのは放課後になるだろうか。

 目標は学年五十位以内。

 一学期の順位から見れば一クラス分はジャンプアップしないと辿り着けない、やる事はやった感はあるも結果までが長く感じる。

「柊、次英語だぞ……」

 福羽が休み時間に来た。

 彼にとっては自分と同じく五十位以内を決める物だし、もう一つの目標「柊優斗より上」が決まるテストだ。

 現時点で総合十点差で福羽には負けているが、英語は得意科目で逆転の芽はまだある。

 素直に負けたくは無い気持ちがある。

「俺、テスト結果で緊張するの初めてだよ……」

 いつも明るいムードメーカーが震えるチワワみたいになっているのが面白かった。

「でも福羽も今回大躍進で驚かれたよな」

 自分も福羽も学年順位では中央値で来ていたのが、今や上位層へのアプローチが出来そうなとこまで伸びているのだ。

 それも鹿島さんの指導のおかげ、勉強方法から目標の持ち方まで感謝だ。

 そんな鹿島さんもトップを狙っている。

 今の所、二点落として後は全て満点。

 このゾーンで競い合うトップ層は化け物かと思える。

「はい、お待ちかねテストだよ〜」

 英語担当の先生が入ってきた。

 ついに決まるとなると胸が高鳴る。

 号令と共に全員が着席し、少し沈黙が訪れた。

「何だ皆、緊張してるのか〜」

 先生が沈黙に笑う。

 そんな笑いに皆が弛緩したとこで、テスト返しが始まった。


「——鹿島」

 まずは鹿島さん……受け取って、テスト用紙を確認……小さなガッツポーズが見えた。

 あの様子なら英語も満点だったのだろう。


「——柊」

 来た、さあどうなるか。

「……柊、伸びたなぁ」

 先生が一言添えて渡してくれたテストを見て拳を握った。

 九十五点


 自分史上歴代最高点を叩き出した。


「——福羽」

 すぐに福羽の番が来る。

 この結果により福羽の目標がクリアするかが決まる。

「福羽も今回頑張ったなぁ」

 先生の言葉が聞こえる。

「おお!おお!」

 福羽が声を上げる。

「八十五点だ!」

 (高得点だが英語で突き放したか!?ん?まてよ!?)


 授業が終わり……鹿島さんと福羽が集まってきた。

「まてまてまてどうなった!?」

「落ち着いて福羽君、えーっと……」

 鹿島さんはこれまでの自分と福羽のテストを計算してくれている。

 そして計算が終わり……鹿島さんの目が見開いた。


「一点差……福羽君が一点差で上回ってる!」

「おおー!」

「なんだと……」

 最後に僅差となったのは感覚的に分かったが、一点差は予想外だ。

「最初の歴史で逃げ切れた……危ねぇ……」

「そうかあれが十一点差、英語が十点差か……」

 これは悔しいとしか言えない、だがお互いに頑張った結果に拍手だ。

「福羽の目標一つクリアだな……」

「ああ!後は学年五十位以内か……点数的にどうなんだろうな」

「二人共十分望みはあるよ!平均はクリアしてるし!」

「鹿島さんはどうなんだろうね?」

「そろそろ張り出しがあると思うんだけど……」


「おーい職員室前にトップテン出たぞー」

 クラスメイトの誰かが知らせてくれて、三人頷く。

 職員室前に着けば人だかりが出来ている。

「……あ、あった!」

 鹿島さんは自分の名前を見つけ指差した。

 

 ——増田 心音 総合 五百満点 一位

 ——鹿島 詩華 総合 四百九十八点 二位(同率)

 ——磐田 蒼助 総合 四百九十八点 二位(同率)


「な……二点落としだけで二位なのかよ!?」

「しかも、単独じゃ無い同率でだ……」

「うーん、届かなかったかぁ……次がんばろ!」

 サクッと切り替えてる鹿島さんも凄いのだが、本当にトップ中のトップは一点二点で決まる想像が付かない世界だ。

「なあ柊、俺達レベル低い争いしてたな……」

「いや、自分達は自分達で頑張ったんだよ……」

 鹿島さんを下した一位は別クラスのトップ常連。

 ——増田 心音(ますだ ここね)

 満点で今回のトップを取った才女。

 クラスは違うが一学期からの常連で名前は知っている。

「あ、心音ちゃん〜」

「え?」

 鹿島さんが犬みたいにパッと女の子に飛びついた。

「おい、あの子が」

「みたいだな……あの子が増田さん」

 福羽と二人で鹿島さんがくっついている女子を見る。

 大人びた黒髪にメガネが似合う、お姉さんと言われても差し支えない、いかにも優等生といった感じだった。

「もう〜また負けちゃった」

「珍しいわね、鹿島さんが二点も落とすなんて」

「えへへ、次は負けないから!」

「うふふ、待ってるわよ」

 実にほわほわした空気だが、トップの座を争う二人。

「あれ?二人共どうしたの?」

「あ、いや詩華ちゃん増田さん知ってたんだなって」

「うん!一学期の時に順位見て探しに行ったんだ〜」

「鹿島さんアグレッシブだねぇ……」

 惜しくも鹿島さんは目標達成ならずだったが、前回より一つ順位を上げ二位でフィニッシュ。

 おめでとうとお疲れ様を贈り、教室へ戻った。


「……鹿島、次こそは」

 その時は三人共気付かなかった、自分達を見る男の存在に。

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