結果発表
——テストが返ってくる
それだけなのに緊張してくる。
いつもより頑張ったから怖いのだろうか、もう足掻きようは無いのだが。
「——柊」
「ハイ」
担任の教科は歴史、一番に苦手意識を持つ教科からだ。
教壇で受け取り席に帰りながら少しずつテスト用紙をめくり……
点数を見る。
七十九点
自己最高点、目を見開く。
(やった!一番苦手科目をこの点なら……!)
学内五十位以内が目標としている今回のテスト、希望が見えてきた。
「——福羽……お前どうしたんだ?」
教壇で福羽が呼ばれているが、様子がおかしい。
担任が頬を掻き、クラスのムードメーカー兼お調子者の福羽を見つめて……笑った。
「頑張ったな」
受け取った福羽が急いで確認をして……ガッツポーズをクラス中に見せつけた。
「うおー!きたー!」
なんだなんだとクラスの何人かが福羽の側により、驚きを隠しきれない表情になる。
「きゅ、九十点だとぉ!!」
誰かが点数を叫んだ。
福羽のテスト用紙には九十と言う数字が見える。
(なんだって……!?)
流石に高得点すぎる、一学期の段階では自分と福羽は平均点に収まるゾーンだったから、共に伸びはしている。だが福羽は上位層に食い込む躍進を見せて担任まで驚いた。
「福羽すげぇな!」
「なんでいきなり!」
「なんかやってないだろうな?」
クラスの中心人物の躍進は騒ぎになる、担任が慌てて落ち着かせている。
席に戻りながら福羽は「やった、やった!」と舞い上がる。その気持ちは凄く分かってしまう反面、大幅に抜かれた事が悔しい気持ちもあった。
そして、休み時間。
皆テストの結果で持ちきりだった。
「福羽おめでとう」
「なあ柊!夢じゃないか!?」
初っ端でこれなら他も期待は出来そうだ。
「二人共良いスタート切れたね〜」
間違いなく今回の功労者、鹿島さんがニコニコと来る。
「詩華ちゃん、ありがとうございます!おかげさまで最高の点取りました!」
「いや、本当鹿島さんには感謝しか言葉出ないよ……」
「ううん、二人が頑張ったからだよ!」
聖母のような笑顔だ。
「あの……鹿島さんは……?」
自分達の点数の高さに喜んでいたが、鹿島さんは時間をこちらに割いて教えてくれた。
彼女は一体何点になったのか……
「私?私は……ハイ!」
持っていたテスト用紙を見せてきた、点数は……
百点
「うっそ……」
「え……詩華ちゃん、満点……?」
百点満点のテスト用紙なんか都市伝説だと思っている二人には、現実の物なのか混乱してしまう。
「歴史は得意科目だからね、落とさず住んで良かったよ」
学年トップ三位以内を争う強者の言葉に、自分達の点数が霞んで見える。
「上には上が居るんだな……」
「自分七十九点で喜んだんだが……」
「二人共しっかりしてよ〜どれだけ頑張ったかは伸び幅でわかるんだから、ほら次は現国だよ」
教室入り口に先生が見えた、まだテスト返しは始まったばかりだ。
——時間割が進みテストが続々返ってくる
現国や化学、体育に数学。
「今のところ柊よりは上だ!」
悔しいが福羽と差が埋まらず、初っ端の歴史テストで大きな差が生まれたままだった。
ただ、どれもがクラス平均を上回り学内順位はかなり目標の五十位を見える展開になっている。
そこで鹿島さんに異変があった。
「あちゃー二問落としちゃった〜」
今日最後のテスト返し数学、そこで九十八点とついに満点を逃したのだ。
本人曰く自信なかった問題が二つあって、やはりそこだったと語る。
「計算ミスとかうっかりじゃなく、もう分かった上で落とすレベルなのか……」
戦いのゾーンが違いすぎて、本当に同じテストを受けてたのかすら疑う。
「でも詩華ちゃんまだ二点だけでしょ?」
「ん〜トップは一点の争いだからどうだろ〜クラス違うから相手がどうなってるかだね〜」
ほわほわと言うがギリギリの争いに、トップ層って怖いと思うのだった。
福羽に約十点差は付けられたものの、軒並み過去最高点を出せた高揚感が凄まじい。
「頑張ってみるもんだな」
「ああ、柊に勝てて俺は嬉しい」
「最後週明けの英語があるじゃないか、自分の一番得意分野だぞ?」
そう、まだ逆転の芽は残っている。
自分の中でも自信が一番ある教科、もしかしたらもしかするかもしれない。
「週明けが楽しみだな、詩華ちゃんの点数も気になるよな」
彼女は数学の二点落とし以外は満点、仮にそれだけでフィニッシュをして順位三位とかなら、何したら勝てる世界なんだと思うしか無い。
テストの点でワクワク出来るのは初めてだった。
良い報告となりそうだ。
家族の顔が浮かんでいた。




