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紡ぎ紡がれこの店で  作者: かずや


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選択肢の為の


 木曜金曜に集中して勉強の気持ちの土台が出来て、テスト一週間前を迎えようとする。

 土日は学校が休みとなる分、自主学習でどこまで伸ばせるかが肝になる。

 今回のテストで大幅なランクアップを目指している。

 大体中央くらいの位置から上位勢の足元辺りまで、そう考えるとなかなかチャレンジではある。

 そこまでやって目標をクリア出来る見立て、勉強とは底はあっても上限が無いものだ。

 自分にやれる事は積み上げる事しか出来ない。

「とは言え、疲れた」

 これまでもテストが近くなれば勉強の真似はしてきている、だが今回は質が違う。

 いつもと違う目標に、やってもやっても届かないんじゃないかと不安を覚えるのだ。

「少し休憩しよ……」

 今日からバイトも強制ストップをかけられている。

 この辺りは家族経営の職場の行動力だろう、有無を言わさない母の圧があった。

 父は口を出さず母に従うだけだったので、勉強面は圧倒的に母が舵を取る。

 リビングに飲み物を取りに行けば、姉がお腹を見せてダラダラしている。

「こんな風に見えて勉強できるんだもんな」

 恨みがましく姉を見遣る。

 親は違えど小さい頃から一緒に生きてきて、姉は姉だと認識している。

 客観的に見て評価をすれば、容姿は良い頭も良い器量も良い。

 同年代友達代表の福羽曰く、「女神様」だそうだ。

「あいつは夢見過ぎだな」

 年頃の女性とは思えないだらけ方、下着でうろつく事だってある。

 自分にとって茜はどこまでも「姉」だった。


「何見てんのよ」

 無意識に見てた事を気付かれた。

「いや、なんでもない」

「何よ〜勉強教えてあげよっか〜?」

「良いよ別に、姉ちゃん今日大学行かないの?」

「今日はオフなのよ、だから暇なの」

「ああそうですか……姉ちゃんさ」

 前から少し疑問に思っていた事をぶつけてみた。


「彼氏とか居ないの?」


 家族の中で話題に上がる事なく、でも父と母もうっすら気にしているだろうポイントに踏み込んだ。

「彼氏?居ないよ、今は」

「今はって、昔は居たの……?」

「何?アンタそんな話が気になる年頃?どうしようかな〜プライベートだしな〜」

「いや、別にどうしても知りたい訳じゃないから」

「冷たいわね、まあ良いわ。私に釣り合う男が現れない事にはお付き合いは無いわね。店の未来の為に考える事で忙しいのよ」

「……ふーん、出会いが無いって事?」

「たまに合コン誘われて行くけどピンと来ないわね〜あ、父さんには内緒よ」

 合コン行ってるんだと、意外な面に驚く。

 家にいる時は徹底的に家にいる、気付いたら外に出回っている。大学生ってそんなに自由に動けるものなんだろうか。

 高校生の自分からすれば、平日の朝から夕方まで決まった時間は学校と決まってる。

 それを踏まえて姉を見ると、やっぱり自由度が高い。

「……姉ちゃんは大学を決めた動機はつむぎ亭の為?」

「そうね、それで父さん母さんとは喧嘩もしたわ」

「え?喧嘩?」

「店の事を気にせず自分の道を考えなさい!ってね、それでハッキリ固まったのよ。これが自分の道だって」

 頑固な姉だ、店の事を考えてるのはよく分かるが生きる指針にまでしている。

「姉ちゃんは良かった……から今そうなんだろうけど、他に選択肢無かったの?」

「あったわよ」

 サラッと言われて目が丸くなった。

「じゃあどうして?」

「アンタ勘違いしてるわね、私は最初からつむぎ亭しか見てないって訳じゃないのよ。成績も可能な限り上げて選べる中から、店を発展させる力を付けたいと思ったから今の大学を選んだの」

「そうなんだ……てっきり昔から店の為って思ってたからだと」

「間違いでは無いけど、私が挑戦したい人生が重なっただけよ。そうじゃなけりゃ……教師とかやってたかもね〜」

 知らなかった意外な一面だった、姉はどこか掴みにくい性格だからこそ衝動で生きているようにも見える。

 だが、どうやら逆のようで見据えた上で動くタイプか。

「アンタも力を付けなさい、今やってるテスト勉強が大きく選択肢の数に関わるわよ」

 姉は冷凍庫からアイスを取って自室に行ってしまった。

「それ、俺のアイス……」

 良い話した料だろうか、まあ良い。

 選択肢を増やす為の下準備が今である。

 少しやる気が固まった。


 

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