イレギュラー対応
毎日一時間放課後に残り勉強をする。
そんな鹿島さんが提案した勉強会は、水曜日には数名のクラスメイトも合流して規模が大きくなっていた。
学年三位の鹿島さんに、クラスのリーダーかつムードメーカーな福羽が揃っていれば人も集まる。
誘った訳では無く、俺達私達も一緒に、あわよくば教えてもらって良いか?と打診してきたグループだ。
「柊は人増えて大丈夫か?」
ちゃんと確認をしてくれるところが福羽らしい。
対して鹿島さんは少し苦戦が見られた。
教え見る対象が自分と福羽から更に二人三人と増えてしまい、人数的に取られる場面が増えてしまった。
(うーん、あれじゃあ鹿島さん自分の事が出来ないよなぁ……)
福羽もそう感じるのか、鹿島さんが動かされる度に目線が追っている。このまま木金も人が増えていく可能性はあるし、対策を考えねばならない。
とは言え自分達だけ鹿島さんを独り占めするのも違うし、勉強の意思があるクラスメイトを無下にも出来ない。
割と難題だった、下手したら人間関係がおかしくなる事もあり得る。
「柊、ちょっと」
福羽が輪から離れたとこに連れ出してきた。
「なあ柊、やっぱりまずいよな?」
何がまずいかは、おそらく一致している。
「うーん、でもどう解決すれば良いか……」
二人で頭を捻る間も、クラスメイトに張り付け状態の鹿島さんはいつもの顔をしているが、負担はあるはず。
そして教室使用が出来るリミットが来てしまった。
自分達も気を取られあまり進まなかった。
鹿島さんは半分以上皆を回ってよくやっていたが、自分の勉強はノータッチだろう……
校門のとこで三人、少し反省会をする。
「今日はイレギュラーだったかな」
苦笑いしながら鹿島さんは言った。
やはり教える事にリソースを割かれたのだろう。
「ごめんな、俺がハッキリ断るべきだった」
福羽も自分を責め出す。
少し良くない流れに見えている、このまま明日明後日。そして来週の一週間前のテスト前短縮授業になれば、より追い込みで人は増える可能性が高い。
そうなれば共倒れもあり得る。
「とりあえず明日明後日を見直さない?」
提案として場所を変えるか教室を使わず個人で頑張るかだが……
「ダメだよ」
反対したのは鹿島さんだった。
「私を気にしてくれるのはありがたいけど、言い出したのは私なんだから」
責任感の強さからか、絶対譲らない姿勢が見える。
どうするかを考えた時、一つ自分に案が浮かんだ。
「じゃあさ、これならどうかな——」
——翌日、放課後
予想通り昨日よりも人が増えている、テストが近づき勉強し出すクラスメイトが増えた。
コレには学年三位の鹿島さんが見てくれると言った付加価値が昨日の勉強会から広まったからだろう。
概ね予想通りだ。
席に着き準備できた者からノートを広げていく、今日は総勢九人居る。
「よし、柊」
福羽とやり取りをして、二人は離れた所で互いに勉強し合う。分からない所は飛ばしてやれる事に集中。
鹿島さんはきょうも引っ張りだこになってしまうが三人で決めた事だ、複数人に教える事にリソースを使う。
そして一時間が経ち、しっかり区切って終わる。
「じゃ、行こうか」
自分を先頭に皆で下校する、そして三人同じ方向に向かい……
「着きました」
自分は見慣れた場所、二人は利用したり夏働いたりしたこの場所……つむぎ亭に。
——昨晩、バイト中にて
「母さん、相談があるんだ」
「え?何優斗いきなり?」
「実は……勉強してるんだ」
「……?当たり前じゃないの?」
何を言ってるんだと言う目で見られたが、詳しく説明する。
「……なるほどね〜詩華ちゃん大変だわ」
「うん、それで時間的に明日明後日店の夜営業まで、空き時間を隅っことか借りれないかな?」
つむぎ亭は二部制で夜営業始まるまでは、皆休憩になる。
三人学校から一番近いのはつむぎ亭で、放課後一時間団体勉強費やしても移動込みでプラス一時間は勉強出来るポイントだった。
「……うふふ、ダメなんて言わないわよ」
「え?」
「息子とその友達が頑張れるなら私達は応援するわよ、ね?お父さん」
「ああ、構わないよ。ちゃんと使ったテーブルを掃除してくれれば良い」
「父さん、母さん……ありがとう!」
「おい、蓮も見てもらったらどうだ?もう高校の勉強なんて忘れてるだろ」
「いやいや……俺はちょっと仕込みが……いやぁ残念だなぁ……」
皆に笑いが起こり承諾が得れた。
これで足りない分を補えるはずだ。
バイトを終えて早速二人にメッセージを送っておいた……
——放課後のつむぎ亭、中休み中
カラン
「ただいま」
「お、おじゃまします〜……」
「皆さんお久しぶりです!」
緊張の鹿島さんと、久しぶりのスタッフ達の再会に花咲かす福羽。
「本当に良いの柊君!?こんな落ち着けるお店貸切なんて」
近寄ってきた母がぽんぽんと鹿島さんの頭を叩く。
「良いのよ〜話は聞いたから気兼ね無く使いなさいな」
「柊君のお母さん……ありがとうございます!」
丁寧に腰を折り感謝を伝える鹿島さん、そしてキッチン奥からトレーに何かを乗せてやってきた父。
「ほら、既に授業に少し放課後勉強してきたままだろ?三人とも一旦糖分補給して仕切り直しなさい」
席にアイスティーと自家製プリンが置かれる。
「え!柊の父さん良いんですか!?」
「え?え?そんなそこまで!」
「礼なら奥の蓮に、アイツが作ったプリンだからな」
キッチンの奥で笑いながら手を振る蓮さん。
スッと母が横に来て「お父さんがしっかり作っとけってうるさかったのよ」てウィンクされた。
……結構楽しみにされていた?
ともあれ最高の環境で、三人は放課後勉強会延長戦に突入出来た。
時間的には一時間くらいしか出来ないが、やはり三人が一番集中できる。
時計を見れば夜営業まであと少し、二人が帰るにも良い時間だ。
「プリン美味かったっす!蓮さんありがとうございます!」
「明日も用意するからね光司君〜」
「ありがとうございました!明日もお借りさせて頂きます!」
「こちらこそありがとうね詩華ちゃん、どうやら優斗も勉強出来てるみたいだし応援するわ〜」
母は鹿島さんの頭を撫でて娘みたいにしている。
「優斗、片付けたら中だぞ」
「うん、わかってるよ」
自分はこのままバイトだ。
二人を店先まで見送る。
「柊君ありがとう!また明日ね!」
「柊〜バイト頑張れよ〜」
二人を見送り中に入る。
「良いじゃない店が役立って良かったわ」
「母さんありがとう」
結果的に凄く集中出来たし、結果を出さなきゃいけない気持ちも強まった。
若干疲れたままのバイトは億劫ではあるが……今週一杯でテスト休みなので頑張ろうと気合いを込めた。




