7 幼馴染があらわれた ▶たたかう
エピソードタイトルはあった方が良いと読んだので毎回つけていますが、バリエーションが少ないので別作とかぶる場合が多発します。お目こぼしを(-_-;)
戦争の情報で世間は暗くなっても辺境は平和です。
私は充実した日々をおくっていたけれど、上手く行くことばかりじゃないです。
こっちが必死に頑張っている時にかぎって邪魔する奴っていますのよ。
「お初にお目にかかりますわ、わたくしアーサー様の幼馴染でエバンジェリ・ハーレーと申します。アーサー様が婚約なさったと聞いてごあいさつに参りましたの」
忙しいってのに寄子の家から来客。対応せざるを得ません。
「ようこそ、シルビア・サフランです」
「お名前はうかがっておりますわ。公爵家のご令嬢で王太子様の元婚約者ですのよね。婚約破棄されただなんてかわいそう」
まったく同情のこもらない声でエバンジェリ嬢は私をニヤニヤ眺めて来やがります。
「アーサーお兄様には小さな頃からずっと良くして頂いていたから、婚約者がどんな方か心配で‥以前の方はお兄様を捨ててしまったでしょう? あの方意地悪なところもあったから別れて正解でしたけど」
先妻がどんな人かは聞いていませんが、意地悪なのはこの幼馴染が理由だったんじゃないかしら?
「開戦でお兄様は忙しくしているのに、サフラン嬢はのんびりなさっているのね」
それはあなたが来たからでしょう。
「オーキッド卿には好きにして構わないと許可をもらっておりますの」
「王都の方は辺境の大変さを知りませんのね。お兄様可哀そう。王都から2度も婚約者を押しつけられて」
エバンジェリ嬢の相手をしている余裕なんてないのですよ。
私はその日たまたまはめていたレースの手袋を外しました。
「どういたしましたの?」
何をされるか気がついていない令嬢の顔に、私は手袋を投げつけます。
「な、何をなさいますの」
「そんなにオーキッド様を慕っておられるのなら、わたくしと決闘いたしましょう」
「へ?」
エバンジェリ嬢の自信満々だった表情が崩れました。
「大けがは避けたいので、素手でよろしいかしら。日時はいつにします?」
「え? そんな無作法な‥考えられません。お兄様にはあなたみたいな野蛮な女、ふさわしくないわ!」
私はそう? と小首をかしげます。
「男の方は好きな女性を巡って決闘するのに、女性ができないのは理不尽だと思っていましたの。ちょうど良い機会だからやってみたいのだけど」
「おふざけにならないで! 失礼いたしますわ!」
怒った彼女は礼儀もそこそこに帰って行きました。
「寄子のハーレー家から抗議の手紙が来たのだが、貴方の口からも詳細が聞きたい。何があった?」
オーキッド卿は帰宅後、早々に執務室へ私を呼び出します。
と言うわけで、私はエバンジェリ嬢から言われたことと決闘を提案したことを全部話しました。
「け、決闘だと? ‥ふふ、はは」
辺境伯は目を丸くして笑っています。珍しいですね。
「それでオーキッド卿はわたくしと幼馴染、どちらがご希望かしら?」
念のため両想いかどうかは確認しなくちゃ。
婚約者の好きな人をボコボコにするのは悪いですから。
(あれ? この場合ボコボコにするのが正解かしら)
正式な婚約者は私なのです。決闘じゃなくてもボコボコにできますね。
「く‥ふ‥それは貴方が私を慕ってくれていると受け取っても?」
必死で笑いをこらえようとする彼に、私はうなずきます。
「確かにわたくしたちの婚約は政略ですわ。でもね、こんな居心地の良い職場、失うわけには行きませんの!」
婚約者が大笑いする場面を、初めて見ましたわ。
「け、決闘でも何でも、す、好きにして構わん」
本当は愉快な人なのかしら。
とにかく当主の許可はもらったので、そのことを手紙にしたためてハーレー家に届けました。
返事は来なかったし、エバンジェリ嬢が我が家を訪れることも一切なくなります。
やってやりましたわ。




