3 新しい婚約者
題名がイマイチだったので変更しました。
で、結果として大勢の前で婚約を破棄されたのね。
殴ったのは悪かったけれど、いい加減ストレスがたまっていたので。
お父様に報告したら頭を抱えています。
「そこまですることはないだろう」
「こうなることは遅かれ早かれおなじことでしたわ」
家柄だけなら確かな私だけど、性格が残念なのは昔からなのよ。
「ですから、初めからわたくしと婚約など結ばなければよろしいのに」
「たとえ婚約破棄されるとしても、お前ならもっとうまくやれなかったのか?」
お父様それは買いかぶりすぎですわ。
あとあまり頭皮はかきむしらない方が良くてよ。
騒動から数日後、王城から命令が届きます。
「王家から命令だ。お前はペレニアルのオーキッド卿に嫁げ」
「ああなるほど」
王太子を殴ったことは不問にしてくれるようね。
王国のペレニアル地方は隣国と国境を接している辺境の地。
そして領主のオーキッド卿は無情にも奥方を虐げ、昨年離縁されたとか。
「王家としてはオーキッド卿に中央とのつながりを持って欲しいから、わたくしがちょうど良いのですね」
「そうだ。お前のような無骨者にはピッタリだろう」
そこは同感かもしれません。
はい、と言うわけでやって来ました辺境のペレニアル地方へ。
辺境伯のお屋敷は街壁近くに建てられていました。町の中心部のにぎわいとは打って変わって閑静な場所ね。
馬車を降りると使用人に出迎えられ、屋敷では大柄な男性が立っています。
「はるばるご苦労。私が当主のアーサー・オーキッドだ」
低くて渋い良い声ね。短く整えられた赤毛が眩しいわ。
「お初にお目にかかります。わたくしシルビア・サフランと申しますわ。これからお世話になりますね」
私はていねいにお辞儀をしたのに、オーキッド卿はさっさと踵を返します。良い姿勢で。
2人の間にはかなりの距離が。
「お待ち下さい、それだけでございますか?」
「くわしくはそこにいる執事のクラークにでも聞け。後、私に愛される期待など持つな」
私はあせりました。この男の一挙手一投足が私の本能に語りかけて来ます。
ここでこの方を逃してはいけないって。
(無関心はダメ。どうしたら私を見て下さいますの?)
辺境伯は男性で武闘派で社交にも興味が薄くて男友達はそれなりだけど令嬢との交流はほとんどなくペレニアル地方を治めるようになったのは20歳になったばかりで気苦労も多く子供時代はやんちゃだったのに今はその片鱗も見せない‥
今までに調べたオーキッド卿の情報が脳内を一瞬で駆け巡りました。
そして私は気がつくと、辺境伯に向かいタタタッとかけ寄り‥飛び蹴りをくらわしていたのです。
美丈夫の体がドスンと倒れました。
「はあ?」
狼狽しながらこちらを向くアーサー卿。そりゃそうでしょう、令嬢に攻撃されたことなどないでしょうから。
私は必死に頭を下げます。
「も、申しわけありません、しかし辺境伯様とはどうしても懇意にしたく呼び止めてしまいました」
それなのになぜ蹴りをかましてしまったのよ私!
先ほど一瞬で決断してしまった自分の考えなしの行動に、頭をかかえてしまいます。
「くく、呼び止めるために王都の淑女は飛び蹴りをするのかな?」
あ、辺境伯様はウケてくれたようです。良かったぁ~
ホッとして汗がどっと出ました。
「それで、用は何だ?」
「えっと、わたくしはあなた様の婚約者として何をしたら良いでしょうか?」
仲良くなるためにはこの方の役に立つのが一番よね。婚約者であっても遊んでばかりはいられないし。
「特に考えてなかったな。好きにして欲しい」
「了解です」
まだ目を丸くしてる家政婦長に部屋へ案内させます。
寝室で侍女と2人きりになったら、お小言をこぼされてしまったわ。
「まったくお嬢様ときたら」
私についてきてくれたのはベスだけ。この子だけは公爵家でも馬が合ったの。
「で、本音は?」
「お嬢様にけり倒された時の卿のあの顔! 笑いをこらえるので必死でしたわ」
そうよね、と2人でフフフと笑い合いました。
無関心から放置、の流れを阻止するためには‥と考えたあげく飛び蹴りに落ち着きました。




