2 自身の欠点
ワンオペ令嬢のお話がやたらと多いなーと思っていたらほとんどAIらしいです。
道理で同じようなお話がたくさんあるのですね~
婚約者である以上、王太子の命令はすべて完璧にこなさなくてはいけません。
「議会の案件を貴族間ですり合わせしたい。3日で予定を調整しろ」
「無理です」
前半はともかく貴族の予定を3日で調整するのはどう考えても私には無理ですわ。
「できないだと? 無能め」
しょうがないじゃない、不可能なことに全力をかけるなんてしたくないのですから。
「国家の予算を増やすため、関税を増額する。神殿への参拝客からも旅行税を取るか」
それ、商人や観光客の行き来を阻害するやつですよ。
注意しても「私が間違っていると?」ってだけで改善案も聞いてくれないし。
ま、彼だけを悪く言うのもダメね。私にだって欠点はあるのですから。
「労働者が足りない‥よし、隣の小国を併合するか。兵器の在庫を調べて諸侯に徴兵を進ませろ」
「え、気持ち悪くなってきたのでやりません」
時々王太子の命令を聞くと頭がクラッとして何も手につかなくなりますの。
婚約者には罵られるけれど、これはもうどうしようもないようね。
周りの使用人はどんどん辞めても婚約者である私は逃げられないのですから。
仕事がうまく行けばうまくいったで、王太子は自分の手柄にしています。
最近は家族に訴えても取り合ってもらえなくて、心が折れそうだったわ。
「ああ、君よりビビアンの方が婚約者になってくれればいいのに」
聖女様なら王太子の伴侶になれなくはありません。
だから婚約がなくなる予想はあったけれど、いきなり破棄されるとは思わなかったわ。
だって私、役に立つところでは立つのよ。
王太子には伝わらなかったみたいだけれど。
「シルビア、私の言いつけを聞かず、何をやっていた!」
ある時なんて激怒した王太子につめ寄られたこともあったわね。
え、食料流通のため大臣と話し合ったやつでしょうか? それとも老朽化した水路の整備の方でしょうか?
「どれもこれもだ、なぜ勝手なことばかりする!」
「え、やっておかないと、なんかヤバそうだったので」
「判断は私がする。お前は自分の仕事をしろ!」
他人の仕事を手伝えばそれはそれで怒られます。
(ああ、転職したい)
ぐったりする私が急ぎ足で王宮を移動していますのに、王太子はビビアン様とお茶会なんてしているし。
隠れているつもりでしょうが、教えてくれる人はいつもいますの。
ここ最近は特にひどくて、怒鳴り声が毎日とぎれなかったわね。
「はあ? 王都で食料が不足して物価が上がっている? 現場は何をしていたんだ!」
宰相からの報告に王太子は激怒しているけれど、それ現場へ手を回す途中であなたが止めたからですわ。
「これを打開する手は‥そうだ、東の領地は豊作だったな。王令で徴収しろ」
そーゆー強硬策を取らずに済むように手を回したかったのですが‥
「領地を手に入れ労働力を確保する、1番手っ取り早いのは侵略だな。どこを攻め取るのが簡単か調べろ」
あーまた気分が悪くなってきましたわ。
「反対です。戦争は莫大な費用がかかり、コストパフォーマンスに見合いません」
一応、頑張って反論してみます。
「やってみなければ分からないだろう」
やってみなくちゃ分からないで始めてはいけないことが戦争です。
「戦いは必ず勝利する目算があって初めて行うことですわ」
これは古来から言われている鉄則よ。
王太子であれば絶対に習っているはず。
「そんな昔の知識で現在の戦いを語れるか。兵器と魔法を組み合わせた我が国の戦力を試してみたかったしな」
(ダメすわこいつ)
脳内に破滅への道筋がスッと描けました。
私はため息をついて胃を押さえます。
「その方向で進められるのでしたら、わたくしは手伝いません。気持ちが悪すぎます」
気持ちが悪いって理由で命令を聞かないことが悪いことは私だって分かっています。
だけど仕事とは発展のためにするの。滅ぶためではなくてよ。
「それはお前の我がままだ。王太子妃として失格だぞ」
「構いませんわ。どうぞ婚約を破棄して下さい」
私は王太子に背中を向け、その場を去りました。
しばらくは王太子と顔を合わせることもなく自分の仕事を粛々とこなします。
勝算をこれでもかと集めてから戦えと書いてあるのは孫子です。この世界にも似たような人がいるとしました。
やってみないと分からないだろうで始められたのが太平洋戦争です。




