14 愛する努力
(それなりに役に立って、距離が縮まったと思っていたのに‥私だけだったの?)
時々は好かれているようで嬉しくなるのに、次の瞬間には嫌われているのかと不安になります。
「もっとわたくしにできることがあればいいのに」
晩餐の席で心の声がもれ出てしまいましたわ。
「できることとは、誰のために?」
辺境伯の機嫌はまだ直らないようです。
「もちろん、オーキッド卿のためですわ」
私が力強く言葉を紡いだのが良かったようね。彼の眼差しが柔らかくなりました。
「ではその、名前を呼んでくれないだろうか」
オーキッド卿はそうおっしゃってくれました。
やっぱり私たち、仲良くなっていますよね?
「その程度でよろしいのでしょうか‥アーサー様」
お名前を口にすると、ドキドキするわね。
「私もシルビアと呼んでも良いか? その‥歩み寄る努力はお互い必要だろう」
努力、その言葉が私を貫きました。
(あなたが優しいのは努力しているから)
私を好きなわけではない、と気づいて悲しさで心があふれかえります。
「嫌ですわ、努力なんて」
アーサー様はわたくしを見つめますが、耐えられそうにありません。
まだ食事は終わっていませんが、私は席を立ちました。
(私はこんなに苦しいのに)
胃の当たりがキリキリするのは嫌な予感じゃなくて恋だからですわ。
(いつの間にか私、あの方に惹かれていたのね)
彼はきっと私の気持ちを無下にはしないでしょう。
優しい方ですから、精一杯の努力で迎えてくれるはずです。
(でもそんなの耐えられないわ)
気持ちが決して手に入らない方を思い続けるなんて、できません。
だから出て行くことを決めましたの。
(私がいなくなったら絶対困るでしょうが‥必要な事は大体済ませましたから)
最後にひっぱたこうかとも思いましたが、それは何となく違うなッと思ってあきらめます。
(それに王太子と違ってアーサー様はスキがないのよね)
背後を取れればともかく、正面からでは防御されるかよけられるか。
「やっぱり油断しているスキを見計らって飛び蹴りよね‥」
ため息をついていたら、侍女のベスに心配されてしまいました。
「お嬢様そんな不穏な発言なんて、一体どういたしたんです?」
「‥アーサー様はわたくしを愛するよう努力をして下さっているけれど、それが辛くて」
一度口にすればどんどん本音がこぼれます。
すっかり好きになってしまったこと、想いが返ってこないのなら別れようと思ったこと、でも最後に1発殴ろうとするのは無理っぽいこと。
話すうちに気持ちがぐっちゃぐちゃになって泣き出してしまいます。
はあ‥全部話してしまったわ。
「それはオーキッド卿が悪いですよ。シルビア様、それなら出て行く前に婚約者へ嫌がらせをしてはいかがでしょうか」
ベスの提案は嬉しいけれど、拳を交わす以外のやり方を知らないのよね。
彼はなんでも私の我がままを聞いてくれますから、嫌がることなんできないと思っていたけれど。
「あら、それならちょうど良く最近嫌なことを聞いたばかりだったわ」
「お、情報は持っているんですね。アタシにも教えてください」
この間の出来事をかいつまんで伝えると、ベスはニマっと笑いました
「それで行きましょう。執事さんにも協力してもらえば完璧です」
執事に事情を話したら、すぐ計画に乗ってくれましたわ。




