12 夢
シルビアの視点に戻ります。
「は? 王家がさらに別の国とも戦争を始めた? もちょっと攻めやすい国を併合して魔晶石を手に入れるですって?」
王都から隣国ウィードへの侵攻が発表されました。
ハッキリ言って信じられません。ザフラとの戦争でいっぱいいっぱいなのに、また違う戦いを始めるんですの?
なんかもう頭がおかしくなってきましたわ。
オーキッド卿も頭を抱えています。
「王家は馬鹿なのか? うん、馬鹿なんだな」
早めに増やしておいた備蓄もどんどん減っていますのに、王都からくる情報は暗い物ばかり。
聖女ビビアンが強硬派をたきつけるから王子たちも止まれなくなっているとか、ウィード戦戦に送る物資はすでに欠乏しているとか。
「ウィードとの前線にはクロード王弟が向かったそうだ」
「‥あの王族で1番まともな方が‥」
思い付きで始められた戦線は非常に危険な地帯です。
王弟殿下が命を落としかねないなんて、無理よ。
頭痛と吐き気がすごくて、もう考えるのも嫌になっちゃいます。
(眠れない)
寝台の上で私は寝返りをうちました。
このままでは国の破滅へまっしぐらです。
(どうしたら止められるかしら)
脳内に、オーキッド卿の笑顔が浮かびました。
ウットリしていると、そこは婚約破棄された夜会です。
王太子を殴りつけているのはアーサー様。
彼は私を抱き寄せ、優しくほほ笑んでいました。その足元で無残に倒れる王太子。
これでアーサー様が戦争を終わせてくれるでしょう‥
(あら、これ夢じゃない)
少しは眠れたようね。日が昇りかけていますわ。
それにしても今の夢、素敵でした。
本当にならないかしら?
(違うわ、シルビア。本当にしてしまうのよ!)
私はガバッと跳ね起きて、ガウンだけはおりオーキッド卿の寝室に向かいました。
「お早うございます、シルビアですわ」
「え、なぜこんな早い時間に」
扉をたたくと、すぐ出迎えてもらえました。
オーキッド卿は身支度をしていた途中のようで、ラフなシャツ姿。
普段と違ってドキドキします。
「オーキッド卿‥お願いがあるのですが‥」
私は彼を見上げました。ここが勝負のときですわ。
「国に反旗を翻してもらえないでしょうか」
「分かった」
ダメ元で頼んでみましたら‥あっさり受け入れてもらえたわ。
驚きで目をぱちくりさせてしまいます。
「反乱‥クーデター‥独立‥君はどれが好きだい?」
彼の手が、私の頬をなでます。
かぁっと熱くなりましたが、言うべきことは言いませんと。
「わたくしが選んでいいのでしたら、王弟殿下を王座につけます」
「ああ、そうしよう」
良かったわ。私の言葉は届いたのね。
「では他の領地にも声をかけて連合いたしますね」
私は何となく味方になってくれそうな貴族を頭に描きます。
ところで、お話は終わったのにごつごつした手が私から離れないのはなぜかしら?
「オーキッド卿?」
私が問いかけると、辺境伯は悲し気なお顔をされました。
私ばかり我がままで、嫌われてしまったの?
「ええっと、わたくしにも仕事をお命じ下さい。卿のおっしゃることでしたら、何でもいたしますわ」
ムニッとほっぺをつかまれました。
「この場所でその格好でそんな言葉を言うな」
「お嫌でしたか」
「すごく嫌だ」
彼に目を背けられて私も気づきます。
「‥‥! 失礼いたしました。寝間着のままでは仕事もできませんわね」
オーキッド卿は微妙な表情で私を部屋まで送ってくれました。
勘は良いのに鈍感ヒロイン。




