10 王都からの手紙
むむむ‥ウェブ広告よ、アトラスさんとかコーエーさんとかの広告になぁれ♪
ペルソナとか真女神転生とか信長の野望とか三国志の広告になぁれ♪
戦争は終わりません。
小国バドはすぐに陥落しましたが、その小国はさらにその向こうの大国との緩衝材だったのです。
つまり祖国は、外交交渉もなく急に大国と国境を接することになってしまいました。
「あの国は魔晶石の産出国だ。まさか敵には回さないだろうが‥」
「油断は禁物ですわ、あの王太子ですので‥」
ペレニアル領には私が買い付けた魔晶石が集まってきています。しかしそれはペレニアル地方で消費する分だけ。
王国全土はどれだけ困窮しているのかしら。
『ザフラは我が国に魔晶石を売ることを拒否した。しかも奴らがあがめるのは雄神アダーラ、我が国の女神アストレイヤではない! つまり我らこそが正義で奴らは悪! 負けるわけがない、うち滅ぼして魔晶石と広大な領土を手に入れようぞ!』
案の定王太子は最悪の決断をしました。
しかし今度の敵は大国よ。うまく行くわけありません。
「今の国力では彼の国を圧倒できるだけの力はない。新兵器は確かに優れているが敵に壊滅的な打撃は与えられないだろう」
「つまり開戦しても勝利への道筋は描けないのですよね?」
あの時感じた気持ち悪さはこのためだったのでしょう。
王都の使用人は辺境へ情報を送るためひっきりなしに行き来しています。
「これは聖女ビビアンと教会の総意である! 反対すれば女神の怒りがふりかかると思え!」
聖女様何しくさりますの。
案の定戦争はすぐに行き詰まり、国内の魔晶石は底をついたようです。
オーキッド卿の元に手紙が届いたの。王都から魔晶石の供出をしろですって。
「王都の行政は停滞が激しいな」
「王太子の暴走を止める人間がいないからでしょう」
卿はこちらを見てきます。
「その筆頭を追い出したしな」
あの方を思い出すのも嫌なのですが、今の自分が認められているのは嬉しいの。
「ついでに貴方を行政官として迎え入れてやると書いてあった。聞かなくて良いかな」
「ふざけないで欲しいですね」
断りを入れると続いてまた命令が届きます。
「今度は魔晶石を買い付けてやる、とあるな。貴方のことも条件を提示するよう知らせて来た。王都に戻る条件はあるのか?」
私はにんまりして答えます。
「王太子の首をいただけるのなら、いくらでも国のため仕えますわ」
「さすがにそれは書けないな、王太子の廃嫡を条件にするか」
しかし了承の返事は来ません。
魔晶石を送っても届いた代金は最安値だけですわ。
まあこっちも最低限しか売っていませんけどね。
「貴方がこちらに留まってくれるのは‥仕事がやり易いからだけだろうか‥」
執務室を後にしようとした私の耳に、婚約者のつぶやきが届きます。
(な、何かしら、今の意味深な独り言は?)
まさか私のことを気に入ってくれていますの?
顔がカァッと熱くなり、自分に都合の良い考えを追いやりました。
(今更期待して、裏切られたら立ち直れないわよ)
名ばかりの婚約者、実態は上司と部下。それだけだって心地よいのだから、これ以上を望むのは贅沢です。
分かっているのに胸が痛むのはなぜ?
夕食では何を話して良いか分かりません。食堂を静寂が覆います。
オーキッド卿からチラチラ視線を送られたけど、私はうつむいたままでした。
「シルビア嬢」
珍しく辺境伯が私の名前を呼びます。
「私は、貴方を愛する努力をしたいのだが、貴方も‥私を見てくれないだろうか」
『愛する努力』
その言葉が胸に突き刺さりました。
私は無理に笑顔を作ります。
「そうですね、努力、いたしますわ」
貴族なのだから、それくらいは当たり前ですわね。
今重要なのは当主と協力してペレニアル領を戦禍から遠ざけること。
これは仕事です、割り切らなくては。
(それでも、いつか戦争が終わって平和になっても、この方は私を愛する努力を続けるのかしら)
恋心は高望みすぎますが、親愛の情くらいは築き上げられるでしょう。
戻って欲しいからのもう遅い展開ですが、首を引き渡せばいいのに☆と戦国時代的な考えを持ってしまいました。




