第14話 致命的な運命
――お前は医者か弁護士になれ。
在りし日の、前世の親の言葉。
どうして今、思い出すのだろうか。
――医者か弁護士以外は認めないから。
――ゲーム? そんなものに時間を使うくらいなら勉強しなさい。
――友達? 子供の内は友達なんて必要ない。勉強だけしてろ。
――あんたよくも勝手にこんなもの買って!!
漫画やゲームなんか見てたら馬鹿になる!! 勉強しなさい! 勉強だけやっていればいいの!!!
――また友達なんて作って! 今すぐ連絡先全部消しなさい!! そいつらの家にはお母さんが電話入れておくから。息子に二度と近寄らないでって。
――医者か弁護士になりなさい。それが幸せだから。幸せになりなさい。
――じゃないと、産んだ意味が無いじゃない
……。
高校卒業後。
俺は地元を出て、東京の大学に進学した。
親が望んだ通りのエリート大学だ。
俺の人生は、親が考えた通りのストーリーを辿っている。
……あの時までは。
必要な情報を入力して、必要な時に出力する。
俺にとって学校とは、昔からそういう作業をする場所だった。
俺は今日も情報の入力に大学へ向かう。
定められた役割を演じるだけの日々。
駅の改札をいつものようにくぐり抜けて、いつものように決まった時間の電車に乗って。
でもあの日だけは、違ったんだ。
〝『あるまほ!』のNEW ORDERが贈る新作RPG!〟
そんな文言と一緒に、改札前の柱に飾られたゲームの広告。
〝アルマファンタジア〟
俺は思わず足を止めていた。
憂い気の眼差しをした、桃色の髪の少女のイラストに。
その潤んだ瞳が、透き通る睫毛が、仄かに影を纏う顔が。
なぜだかすごく綺麗に思えて。
思わず立ち止まってしまったんだ。
俺の灰色の世界に、彩りが溢れだしたのを覚えている。
*
アルマファンタジアが発売されてから、俺は何周も何周もプレイした。
全てのエンドを回収したし、全ての台詞も読み込んだ。
……でも、ハッピーエンドだけはなかった。
最愛の幼馴染みを喪い、魔神王を倒すという使命感に取り憑かれ、やりたくもない戦いに身を投じる。
そしてどんなに足掻いても、最後は必ず……
そういう役割をひたすらに果たす『ティオ』の姿が、なぜだか自分と重なったのを覚えている。
ハッピーエンドが無いなんてあんまりだ。
そんな結末に納得できなくて、ティオが幸せになる二次創作をたくさん書いてネットにアップした。
他人には笑われるかもしれない。でも俺にとっては、産まれて初めて何かに夢中になれた経験だった。
自分の意思で、何かをしたいと思えたんだ。
ティオが、教えてくれたんだ。
もしもあの時、あの場所で。目もくれず立ち止まらなかったら?
そのままティオのことを知らずにいたら?
操り人形のままで生きていたなら?
――俺は今、幸せだっただろうか?
……。
そうだった。
俺は、ティオに幸せになってほしいんだ。
ティオが笑っていられる世界を作りたかったんだ。
だから――
†
〝エスペランサ・ファム・ルークス〟の属性
――【運命】――
その力は、あらゆる因果を壊し、覆す。
――バッドエンドなんて、認めない
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