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第13話 魔女兵器

 ――ハッピーエンドなんて 認めない


 あらゆる物語は 悲劇に帰結するべきなの


 悲劇こそが 学びなの

 悲劇が人を 強くするの

 何より 悲劇が1番おもしろいの


 ねぇ


 戦争の魔女(アルマゲドン)ちゃん


 君も そう思うでしょ?


 ねぇ


 これを見ている あなたも そう思うでしょ?




 *




 黒い風が泣いている。


 夜の渋谷に星屑が迸る。


 ティオはエスペランサを抱えて、ビルの影に隠れるようにひたすらに駆ける。


 ――上空50mに吊り下がる戦争の魔女(アルマゲドン)の視界には、二つのロックオンが動き回っていた。


 ズダダダダダッ!!


 戦争の魔女(アルマゲドン)の傍らに浮かぶ5丁のミニガンが、ビルごとティオたちを蜂の巣にせんと弾丸を雨のごとく降り走らせる。


「こんのっ……食らえ!」


 脚だけ獣化させて逃げ惑うティオが、ビルの合間から『負の質量』の黒炎を射る。


 黒炎は戦争の魔女(アルマゲドン)に見事命中……したかに見えた。


「避けろティオ!」


 黒煙の中から、キラりと光が瞬くと同時に……ティオの左腕が消えた。


「あぐうっ!?」


 魔神王の性質を継承するティオは限りなく不死身である。故に、欠けた腕も数秒で元通りに再生する。


 だが……


「効いてない……?」


 戦争の魔女(アルマゲドン)は神の傀儡。

 そう簡単には壊れない。


戦争の魔女(アルマゲドン)からの提言:わたし は こんなこと したくな【[神の名]において却下されました】


 糸を弾き、鳴らすよ音を。


 戦争の魔女(アルマゲドン)の背後の虚空から、無数の薄緑の光弾が煙を吐きながら上空へ立ち昇ってゆく。


 そしてそれらはやがて急に地上へ向かって旋回し――


 否、『敵』に向かって魚群のように殺到する。


「追尾……?!」


 駆けるティオを無数のミサイルが、追いかける。障害物を避け、回り込み、それらは確実に獲物を仕留める。


 ――ティオ独りなら、全て避けることもできたかもしれない。

 ――ティオ独りなら、もっと戦えたかもしれない。


 ティオの体に1発、炸裂。

 抱えているエスペランサごと吹き飛ばされる。


 〝覚醒〟に加えて魔神王の力を継承するティオ。その力を存分に振るえば、神性を持つ戦争の魔女(アルマゲドン)相手に善戦することもできただろう。


「うあぁぁっ!!」


 吹き飛ばされる最中。ティオは、右掌を上空の戦争の魔女(アルマゲドン)へ向ける。


 ――出力最大


「黒死雷――!」


【魔神王】の事象を改竄する力の真骨頂。


 あらゆる事象や概念さえ〝停止〟させる『闇』、それを【勇者】の『光』に乗せる。

 それが、戦争の魔女(アルマゲドン)に襲いかかった。




 夜の闇を、黒く塗り潰す――。




 渋谷の街並みが、崩壊する。


 ビルたちは黒き稲妻に薙ぎ倒され、アスファルトの大地はひび割れ隆起。


 仮想の渋谷は、魔神王(ティオ)の一撃によってめちゃくちゃに破壊された。


「お兄ちゃん無事?!」


「あ、あぁ……なんとかな」


 ティオの結界に包まれ更に抱えられ、エスペランサは無傷である。


 だがもしも、戦争の魔女(アルマゲドン)の攻撃が直撃すれば無事では済まないだろう。


 ティオが守らなければならない。こんな弱い姿にしてしまったばかりに。


「マジかよ……」


 塗りつぶされた黒の中に、輪郭と白い糸が浮かび上がる。


 さすがの戦争の魔女(アルマゲドン)といえど、無傷ではなかった。


 左腕と左脇腹は消え失せ、顔も左半分を喪失。


 人間ならば、絶命している状態だ。


 だが、それでも。


 糸が戦争の魔女(アルマゲドン)の体を軋ませる。


 壊れかけの操り人形みたいに。

 ゆっくりと、右腕が持ち上がる。


 そして生きてるフリしたオートマタは、おもむろに右手で天を指差した。


「何を……?」


 戦争の魔女(アルマゲドン)の一挙手一投足。何が起きるかわからない。

 ティオは身構える。どんな攻撃にも対応できるように。


 しかし――


「ティオ……!?」


「え?」


 その瞬間――


 ティオの体が右に倒れ込む。

 踏ん張ろうとするも、右足に力が入らない。

 受け身を取ろうにも、右手が動かない。


 右の視界が、無い。


 ――ティオの右半身が、消えていた。


 断面からこぼれ落ちる自らの臓物越しに、ティオはエスペランサへ手を伸ばそうとする。


「おに、ちゃ……上っ……!」


 左肺だけで吐き出した言葉よりも先に――


 ――次の一撃が届く。


 魔神王の力を継承するティオは、ほぼ(・・)不死身である。

 肉体の右半分を喪失していても、そこから再生する事も可能だ。


 だが――


 ――『心臓(エスペランサ)』は、そうはいかない。



『あらゆる現代兵器を再現する』


 戦争の魔女(アルマゲドン)の持つ能力のひとつである。


 ティオの右半身を喪失させた攻撃の正体。それは、上空100kmに顕現した軌道衛星型レールガンである。


 弾速は秒速50km。


 とある世界の人類が七百万年の歴史の末に紡ぎ精錬した、悪意の凶弾――


 名は、【神罰】。


「ティオっ!? ティオっ!」


「来ちゃダメおにいちゃ――」


 次の瞬間――2発目の神罰が、ティオに駆け寄ろうとしたエスペランサの胸部に直撃。


 結界すらも打ち砕かれ、エスペランサの華奢な身体は跡形もなく消し飛んだ。




戦争の魔女(アルマゲドン)


嘗てとある世界に破滅を齎そうとした、黙示録の四騎士の名を冠する【魔女】の一角。

彼女はその中で唯一、神の意思に叛き人間に味方した[裏切り者]。

[【戦争】を冠していながら平和を望む愚か者。]


人類と世界を救うべく、そして未来を守るために【支配】と戦い、[無様に]消えていった。

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― 新着の感想 ―
魔女兵器というか、兵器の魔女来ちゃった!?
「神さまは愛や正義と同じくらい、悲劇や絶望を好んでいる」ってか。 その世界運営思想に口を出す気はしないが…。 悲劇の【段取り】も、絶望の【演出】も、お粗末過ぎるよ、女神様。そんなだから、異世界からの…
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