第1話 チュートリアル開始
視界が暗転し、次の瞬間、柔らかな光に包まれる。
石畳の感触。
噴水の水音。
周囲に広がる、人のざわめき。
「……なるほど」
身体感覚は、初期設定の延長線上にあった。
周囲には、同じように立っている人影がいくつもある。
年齢も装備もばらばらだ。
頭上に、淡く光る文字。
『ようこそ、冒険者の皆さま』
案内役の声が響く。
『これより、基本操作および世界の説明を――』
クロウは続きを聞かなかった。
意識は、すでに周囲へ向いている。
建物の配置。
道の流れ。
人が集まる場所。
初心者向けとして、無駄がない。
歩き出し、噴水の前で足を止める。
水面を覗き込むと、像は正確に追従していた。
――自分は、ここにいる。
その認識が定まった瞬間、
周囲の音が一拍、遠のく。
世界と自分だけが、切り出される。
視界の端に、通知が表示された。
【通知:初期行動が基準値を超えました】
クロウは一瞬だけ目を向け、戻す。
「……そう」
今度こそ、案内役の前に立つ。
説明を聞き流しながら、ステータスを確認する。
バランス型。
突出はない。
未開放の項目がひとつ。
深追いはしない。
広場では、まだ誰も気づいていない。
この世界が、
すでにほんの少し、想定とは違う動きを始めていることに。
※以下は補足的な用語メモです。
本文の理解には必須ではありませんので、
読み飛ばしていただいて問題ありません。
【用語メモ】
■ VRMMO
仮想空間に接続して遊ぶオンラインゲームの総称。
本作では、世界で初めて実用化されたものとして描かれている。




