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file:06

ーここは、何だ

ー真っ暗じゃないか

ーいや、違う

ー目を閉じているんだ



ドクンドクンドクンドクン



ーこれは、心臓の音?


(魔女狩りって知ってるか)

ー誰だ

(これは、正当な裁きだぜ)

ーこいつら、僕にしゃべってるわけじゃないぞ



ドッドッドッドッドッドッ



ー急に音が速くなった

ー怖い

ーどうして声がでないんだ

ーどうなってるんだ!手足の感覚がまるでない

ーおい、誰か、誰か

ーくっ





「助けてくれー!!!!!」


目を覚ますと、教室に居た。視線が痛い。生徒から今だかつてないほどの注目を集めている。

立ったまま眠っていたのか。

そして、彼らが、壇上の僕から一斉に目を背けた時、何処からともなく試合終了のゴングが聞こえてきた。



短い教師人生でした。



☆☆☆



校門を出て、どっと疲れが押し寄せてきた。

しをり先生の計らいで、なんとか始末書の提出のみで済まされそうだ。後は、保護者の反応で決まる。


しをり先生といえば、あのおかっぱ少女だけれども、彼女に、双子の姉妹がいるという話は聞いたことがない。昨日、有栖川から聞いた話によると、先生の戸籍や出身中学校のデーターベースからは、目星い情報が得られなかったようだ。(敢えて、どうやったとは聞かない)


バイブレーション?スマホだ。


「おぉ、どうした」


「あなた、私に二度も電話させておいて、その態度は何?」


鞄に入れていたものだから気がつかなかった。そうは言っても、スマホに触れられる状況ではなかったのだが。


「すまん。今やっと落ち着いたところなんだ」


「そ、いいわ」


いいのか。


「それより、あなた、感謝なさい。例のライターの所在が分かったの。雑誌の出版元が倒産していて探すのに苦労したわ。約束は取り付けたから、明日、お宅に伺ってちょうだい」


「僕が?」


「なら、誰が行くの?」


馬鹿なことを聞いた。



☆☆☆



対応してくれたのは、奥さんだった。過酷なジャーナリストの妻というイメージにそぐわない、おっとりとした中年女性だ。

以前、旦那様にお世話になった仕事仲間だと告げると、すんなり部屋に通された。こちらが心配になるくらいだ。

仏壇には、白い歯を見せて笑う彼が写真立てに収まっていた。ソース顔の粋な男性だったことがうかがえる。

三木馨、58歳。彼は、一年前に病死していた。

僕が、一心に手を合わせるところを見て、奥さんは、彼のことを思い起こしているようだった。

気はひけるが、仏壇の間から襖を隔てた隣の部屋で、お茶に呼ばれることにした。


彼女は、よくしゃべった。


“結婚当初、彼の好き嫌いが酷くてよく喧嘩したこと”

“息子が彼の仕事を嫌っていたこと”

“晩年は、いつも病院食の不満をもらしていたこと”

“最期の瞬間に立ち会えなかったこと”


僕が、玄関のドアを開けたのは、もう、日が傾きかけた頃だった。

夕飯を勧められたが、さすがに断った。


ドアが閉まったこと確認してから、手元の資料を脇に抱え直す。旦那さんの扱った事件を再調査していると借りてきたのだ。


コンクリートの階段を降りて、団地の広場に出ると、あたりは橙色に染まって、あちらこちらに遊具の影を伸ばしていた。


その時、深々と帽子を被ったスタジャンの青年とすれ違ったのだが、特に気に留めることはなかった。



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