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今日は、ハーブティーか。部屋中に甘い香りが立ち込めると、御婦人は、“ティーは、心のクスリです”と笑顔で退室した。


重厚な赤の壁に囲まれ、暖炉に当たりながら、馴れないクラシック音楽を聞いていると、つい時間の概念が欠落してしまうようだった。


今日は、生徒に捕まらないよう、HRを終えると、急いで学校を出てきたのだ。

もちろん、道中、和菓子屋に寄ることは忘れずに。

だが、肝心の彼女はというと、僕が訪問してからも、ずっと新聞に顔を埋めている。

こうなってしまうと、もう誰がなんと言おうとも聞かない。


しばらく、ソファで、うつらうつらしているうちに、やっと有栖川は、ローテーブルに英字新聞を投げ出して、僕の存在に気が付いた。

好物の豆大福が皿に用意されていることを確かめると、持って寄越すよう僕に合図する。

肘掛け椅子の彼女は、紺のワンピースに赤いカチューシャをはめて、やはり、こちらを直視することはない。

ティーカップと豆大福をデスクに運んでやると、この少女は、なんの前降りもなく平べったい調子で喋りだした。



「あなたの話からすると、おかっぱの彼女は、我が校の制服を来ていた。しかも、わざわざ改変されて20年も経っていないブレザータイプだった。そこから、年代を搾って、いくらかアタリをつけてみたら、ヒットしたわ」


彼女は、マウスにさっと手を置き、画面をもう片方の指で差して、僕の注意を誘った。

有栖川の背後からノートパソコンのモニターを凝視する。


「サバト?」


その記事は、『衝撃!中高生たちの課外活動“魔宴(サバト)”の実態』と、いかにも低級雑誌らしい、特有の切り口から、綴られていた。


「えぇ、この記事が掲載されたのは、今から10数年は前の話になるわ。当時、近隣の中高生たちがサバトと呼ばれる集会を定期的に開いていたらしいの。一口でいえば、乱行パーティね。近親相姦を見世物にしただとか食糞を強要しただとか、どこまで尾ひれがついているか分からないけれど内容は極めて悪質だったらしいわ」


「何だ、それは。そんな事件聞いたことがないぞ。それと、おかっぱと何の関係があるんだ」


くっと眉間に皺を寄せる。


「焦らない。独自に調べてみたけれど、ただの一度も、公な事件になっていないの。唯一、この記事があるだけよ」


「都市伝説の類いか」


「それは分からない。火のないところに煙を立たせるのが彼らの仕事だからね。でも、もし、こんな集会が開かれていたとしたら、突き止められるかもしれないわ」


「何を?」


「ほら見て。ここよ。サバトに関与していたとされる児童に有名私立H中学の在校生が男女数名いたと書かれているの」


「うちの中学か」


「おそらく間違いないでしょうね。界隈で、男女共学の私立中学校は、ここしかないもの。これは推論だけれど、おかっぱ頭の彼女は、何らかの形で、悪魔の祭典に巻き込まれたのじゃないかしら。それが、現時点で、考えられる、最も濃厚な線よ」



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