表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
19/29

第十九話 もしものときは、私を殺してくれ

お越し頂きありがとうございます。





挿絵(By みてみん)




「これ以上は危険です。街や森の形も変わってしまって、魔物以外への影響も出始めています!」




  ザックが、トトの剣を振り回す私を力づくで止めようとしてきた。今この場で、私を抑え込めるのは、私の次に実力のある自分しかいないと思ったのだろう。




 「どけ。……ザック……いくらおまえでも、手加減してやれないぞ」




  トトを助けに行かなくてはいけない。




 もし、怪我でもしていたら、今度こそ私は私を許せない。




 私の腕を掴む彼の手を、振り払った。




 「ジルフォード! トトは……!」




 「だまれ!」




  私は次の魔物の巣窟に向かうことにした。私の前には、琥珀の剣で焼き払われた、黒い景色が広がっている。ここの魔物の巣窟はすべて燃やしてやったからだ。




 このあたり一帯、トトを探すが、彼女の可愛い姿を見つけることはできなかった。




  愛馬に乗り、再び走り出す。ザックは何も言わずついてきた。言っても無駄だし、止められないと悟ったのだろう。  




 「トトー!! いないかー!!? 私だ! ジルだ!」




  とにかく叫んだ。




 彼女の名前を何度も。何度も。




 しかし、返事はない。




  ザックは叫ぶのをやめてしまった。 


 泣きそうになるたびに馬の手綱を握りしめている。




  その顔を見ると、私の心に黒く泥々と汚水が溜まっていく。そのヘドロが心臓の回りをこれでもかと締め上げてくるのだ。




  生きている……生きている……




 トトは……トトは……トトちゃんは生きていて……


 私を待っている。




 ……それで、二人で工房に帰ってまた一緒に山盛りのご飯を食べて……一緒に寝て…… 




  トトと一緒にせまいベッドで寝てしまったことを思い出した。


 トトは、あの工房のことを、『じるのいえ』と言ってくれた。




 いくらでも思い出す。思いが溢れるように彼女のこと。




 二人でトトの出張先であった職人街に遊びに来た時、初めての二人っきりでの、遠出の旅行になり緊張していた私に対して、トトは行き道の馬車では地獄の覇者のいびきをかき、私は拍子抜けして、トトな隣で笑ってしまった。トトはお土産だ! と色違いのコップを買っていた。それに、毎日コーヒーを入れてくれて……




 鉄の音。




 トトの温度。




 丸まった背中。




 私の頭を鳥の巣にする、硬くてザラザラした小さな手。





 そして……




 私を見上げる琥珀の瞳。




  一つ一つ、あまりにも彼女の大きな優しさに私は甘えて、それがあったから生きてこられたのだと気付かされ、私の身体は震えていた。




  涙が溢れてくる。 




 声にならない声が出る。




 流したらだめだ。




 流したら、もう、あそこに戻れない。




 「トトー! トトー!」




  私は前へ前へ、馬を走らせた。




  ◇




  次の魔物の巣窟に着いた。


 結局ここまで、人ひとり出会わなかった。


 トトの姿も形もなかった。ちぎれて焼けた革のベルトは懐に大事に仕舞ってある。




 馬から降り、再び鞘から愛する人の剣を取り出す。




 「トト……会いたい」




  無意識に呟いた。トトに会いたい。




  どんな形でも。




 もし、もし、彼女が最悪な姿で現れたら、その時私は、もう私を保てなくなるかもしれない。




 「ザック……」




 「はい……団長」




  ザックは私の背後に控えている。目が赤い。




 「もしものときは、私を、殺してくれ」




 「え?」


挿絵(By みてみん)



 「……自信がない。こんなこと、先輩にしか、頼めません」




  かつて私の先輩だった男は、剣の鞘を硬く握り、これ以上ないぐらい真っ青で怖い顔をしていた。




 「………わかったよ」




  先輩が頷いてくれて、少し安心した。




 私は、魔物の巣窟に向かって足を踏み出し、剣を構えた。




ーートト、待っていてくれ!!













ここまで、お読み頂きありがとうございました!




大暴走の果て、死ぬ覚悟まで決める重い男ジルフォード。




トトちゃん、今走ってきてますよー!




面白い!と少しでも思って頂けたら、ブクマ、評価やコメントやレビュー頂けたらうれしいです!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ