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『無能と追放された俺のスキルは“その時不思議なことが起こった”でした』   作者: 楓真パパ


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第6話

草原狼を二体倒した壮真は、血のついた剣を拭いながらギルドへ戻ってきた。




(……なんとか帰ってこられた)




ギルドの扉を開けると、昼間と変わらず賑やかな声が飛び交っている。




受付に向かうと、リリアが気づいて駆け寄ってきた。




「壮真さん! 無事だったんですね!」




「はい、なんとか……」




「よかった……! では、討伐した草原狼を解体所へお願いします」




リリアに案内され、ギルド奥の解体所へ向かう。




中では屈強な男たちが手際よく魔物を解体していた。


血の匂いと鉄の匂いが混ざり合い、“冒険者の裏側”を感じさせる空気が漂っている。




「おう、新人か。草原狼だな。預かるぜ」




解体師の男が袋を受け取り、慣れた手つきで確認していく。




「二体か。初依頼にしちゃ上出来だな」




「ありがとうございます」




「じゃあ、解体料を差し引いて……報酬は受付で受け取れ」




壮真は軽く頭を下げ、受付へ戻った。




受付に戻ると、リリアが笑顔で迎えてくれた。




「壮真さん、お疲れさまでした。こちらが今回の報酬になります」




差し出された小袋には、銀貨が1枚と銅貨が数枚入っていた。




壮真は袋を受け取りながら、ふと気になって口を開いた。




「リリアさん……あの、少し聞いてもいいですか?」




「はい、なんでしょう?」




「俺、王国から来たので……帝国のお金の相場がよく分からなくて。この銀貨って、どれくらいの価値なんですか?」




リリアは「ああ、なるほど」と頷き、


カウンターの下から見本用の硬貨を取り出した。




「帝国のお金は、基本的にこの四種類です」




リリアは机の上に並べていく。






銅貨(1枚)




大銅貨(10銅貨)




銀貨(100銅貨)




金貨(1万銅貨)




「帝国では、銅貨1枚でパン1個。大銅貨6枚あれば、宿屋で一泊できます。一応金貨の上には白金貨という金貨100枚の貨幣があるのですが白金貨は……普通の人は一生触らないですね」




壮真は思わず目を丸くした。




(大銅貨6枚で宿泊……?じゃあ、今回の報酬って……結構デカい?)




リリアは続ける。




「今回の草原狼討伐は、初心者向けの依頼ですが、とてもきれいに討伐されてたので素材の価値が高く銀貨が出ました。初依頼で銀貨を手にできるのは立派ですよ。通常は色々な傷跡とかついてあまり使えないんですよ」




「そ、そうなんですね……!」




胸の奥がじんわりと熱くなる。




王国では“無能”と追放された自分が、この世界で初めて“働いて得た金”だった。




「ありがとうございます。これからも頑張ります」




「はい! 応援していますね」




リリアの笑顔に少し照れながら、壮真はギルドを出ようとした――その時。




「おーい! 兄ちゃん!」




昼間の中年冒険者が手を振っていた。




「無事に帰ってきたな! 約束通り、一杯奢ってやる!」




(あ、この流れ……)




壮真は苦笑しながらも、その声に応じて酒場へ向かった。




酒場は夜の活気に満ちていた。




冒険者たちが酒を飲み、依頼の愚痴や武勇伝を語り合っている。




中年冒険者――名をバルドというらしい――は、大ジョッキを二つ持ってきた。




「ほら、飲め! 帝国の酒はうまいぞ!」




「え、あの……俺、飲んだことなくて……」




「大丈夫だ! 死にはしねぇ!」




(いや、死ぬかどうかの問題じゃ……)




と思ったが、せっかくの好意を断るのも悪い。




壮真は意を決してジョッキを口に運んだ。




――ゴクッ。




(……あれ? 意外とうまい……?)




喉を通る熱さと、ほんのり甘い香りが広がる。




「どうだ! うまいだろ!」




「はい……なんか、飲みやすいです……!」




「よーし、もう一杯いけ!」




「えっ、ちょっ……」




その後――




壮真は、飲んで


飲まされて


飲まされて


飲まされて――




気づけばテーブルに突っ伏していた。




「お、おい兄ちゃん、大丈夫か?」




「ひっく……だいじょーぶです……おれ……つよいんで……」




「完全に出来上がってるじゃねぇか!」




周囲の冒険者たちは大笑い。




「新人がベロベロだぞ!」


「うーーん!かわいい!食べちゃいたい♪」


「おーーい!新人、きれいなおねえさんが狙っているぞ!!」


「明日二日酔い確定だな!」




バルドは苦笑しながら、壮真の背中を軽く叩いた。




「ま、今日は祝いだ。思いっきり酔っとけ」




壮真はろれつの回らない声で呟いた。




「おれ……ぼうけんしゃ……なれた……」




「おう、なれたとも。立派な冒険者だ」




その夜、壮真は“冒険者としての初めての夜”を酒と笑い声に包まれながら過ごした。

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