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『無能と追放された俺のスキルは“その時不思議なことが起こった”でした』   作者: 楓真パパ


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第4話


三日間の旅路を経て、ついに帝国国境の巨大な城門が見えてきた。


灰色の石造りの壁は王国のものよりもはるかに高く、門前には整然と並ぶ帝国兵たちが警備にあたっている。


(……王国とは雰囲気が全然違うな)


壮真は思わず息を呑んだ。


帝国兵は王国兵のような緩さがなく、鎧は磨き上げられ、視線は鋭い。

その姿勢だけで、この国の強さが伝わってくる。


ガルドが荷馬車を止め、兵士に書類を渡す。


「行商隊ガルド商会だ。帝都までの通行許可を頼む」


兵士は書類を確認し、頷いた。


「問題なし。通れ」


荷馬車が動き出す。

壮真もその後に続いた。


門をくぐった瞬間、王国とはまるで違う活気が押し寄せてきた。


人の声、商人の呼び込み、鍛冶屋の金属音。

街全体が生きているような熱気に満ちている。


(すげぇ……これが帝国か)


壮真は胸が高鳴った。


帝国の街に入ってしばらく進んだところで、ガルドが馬車を止めた。


「壮真、ここでお別れだな」


「……短い間でしたけど、お世話になりました」


ガルドは笑って肩を叩く。


「礼なんていらんさ。お前がいてくれて助かったのはこっちだ。冒険者になるんだろ? 帝国は実力主義だ。きっとうまくいく」


「はい、頑張ります」


ガルドは少し真剣な表情になった。


「それと……王国の連中には気をつけろよ。あの国は、何かがおかしい」


壮真は一瞬だけ目を見開いた。


(……ガルドさんも、気づいてるのか)


「またどこかで会おう。生きていればな!」


ガルドは豪快に笑い、荷馬車を走らせていった。


壮真はその背中を見送り、深呼吸する。


(……よし。まずは冒険者ギルドだ)


帝国の中心街にある巨大な建物。

剣と盾の紋章が掲げられたその場所こそ、冒険者ギルドだった。


中に入ると、酒場のような賑やかさが広がっていた。


「おい、次の依頼どうする?」

「昨日のゴブリン討伐、報酬しょっぱすぎだろ!」

「新人か? 死ぬなよー!」


壮真は受付へ向かう。


受付嬢は落ち着いた雰囲気の女性で、壮真を見ると柔らかく微笑んだ。


「ようこそ、帝国冒険者ギルドへ。ご用件は?」


「冒険者登録をしたいんですが……」


「はい、承りました。ではこちらの書類に記入をお願いします」


壮真は名前と出身地(ヤヨイ公国)を書き、簡単な身体検査と魔力測定を受けた。


「はい、登録完了です。あなたは今日から正式な冒険者になります。冒険者ランクはFから始まり、次にEランクDランクと上がっていきAランクの次は最高ランクはSランクとなっています。依頼を着実にこなしていけばランクは必ず上がります。ただしDランクからは試験があります。内容などはその時々によって違うので、その都度お知らせいたします」


壮真はギルドカードを握りしめた。


(……よし、これでスタートラインに立てた)


その時だった。


「おいおい、新人が来たみたいだぜ?」


「しかもガキじゃねぇか。ひ弱そうだな」


後ろから数人の男たちが近づいてきた。

見るからに粗暴な中堅冒険者だ。


「新人はまず“先輩への挨拶”ってもんがあるんだよ」

「分かるよなぁ?」

「金でも飯でもいいぜ? 新人の義務ってやつだ」


壮真はため息をついた。


(……こういうの、テンプレすぎるだろ)


受付嬢が慌てて止めに入ろうとする。


「ちょ、ちょっと! 新人いじめは規約違反ですよ!」


だが男たちは聞く耳を持たない。


「いいじゃねぇか、軽く挨拶するだけだよなぁ?」


壮真は静かに立ち上がった。


「……すみません。俺、急いでるんで」


「はぁ? 新人が先輩に口答え――」


その瞬間。


『その時不思議なことが起こった』


男たちの足元に置かれていた椅子が、なぜか絶妙な角度で倒れた。


「うおっ!?」

「わっ、ちょっ……!」


男たちは見事に転び、テーブルに頭をぶつけて悶絶する。


「いってぇぇぇ!!」

「なんだこれぇぇ!!」


(……いや、俺じゃないよな?)


受付嬢はぽかんと口を開けた。


「え、えっと……壮真さん、すごいですね……?」


「いや、俺何もしてないんですけど……」


騒ぎが収まった後、壮真はギルドカードを見つめながら小さく息を吐いた。


(冒険者になった。ここから……俺の人生をやり直すんだ)


壮真はまだ知らない。


この日から、帝国中で

“ヤヨイ公国出身の謎の新人冒険者” の噂が広がり始めることを。

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