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平凡

咲は対策課のフロアを見渡した。

「ここには化物しか居ないのか……。」

小さく呟く。

対策課には優秀な人間しか居ない。

戦闘の天才。

分析の天才。

交渉の天才。

全員が何かのプロフェッショナルだった。

その中で。

咲は自分を平凡だと思っている。

「資料整理しときました。」

「ありがとうございます。」

「ここ、見落としありますよ。」

「あ、本当だ。」

「どうしましたか?」

「代わりに伝えておきますよ。」

誰にでも強みと弱みがある。

弱みを見抜く。

フォローする。

そうすれば相手は動きやすくなる。

その結果として。

相手の強みを借りる事も出来る。

咲はずっとそうやって生きてきた。

「あ、この前頼んだ件ですけど。」

「もう終わってますよ。」

「え!?」

職員が目を丸くする。

「もうですか!?」

「ありがとうございます!」

咲は軽く手を振った。

「大した事じゃないですよ。」

そんな反応にも慣れている。

自分より優秀な人間を支える。

その人達が成果を出す。

それを見るのは嫌いではない。

むしろ好きだ。

少しだけ。

快感すらある。

だけど。

それでも。

自分が優秀になった訳ではない。

自分が特別になった訳ではない。

咲は小さく息を吐いた。

そして帰路につく。

「咲様!」

玄関を開けた瞬間。

元気な声が飛んできた。

「ご飯出来てます!」

咲は思わず笑う。

「律人君、ありがとね。」

無明は嬉しそうに頷いた。

対策課最強格。

神すら斬り殺せる怪物。

ここにも化物が一人居る。

咲は鞄を置きながら考える。

そういえば。

この飴はまだ使っていなかった。

「律人君。」

「はい!」

「いつもありがとね。」

無明が首を傾げる。

咲は続けた。

「私、律人君に助けられてばっかりだよ。」

「律人君が居なかったら駄目かも。」

これを言えば喜ぶ。

分かりやすくて効果的な飴。

そのはずだった。

だが。

無明は不思議そうな顔をした。

「ん?」

「何がですか?」

咲は少し固まる。

「あー……。」

「ほら、いつも助けてもらってるし。」

無明は即答した。

「当然では?」

「え?」

「咲様は幸せになって当然の存在です。」

あまりにも自然な口調だった。

「だから最大限尽くします。」

咲は目を瞬かせる。

「どうして?」

無明は本気で意味が分からないという顔をした。

「咲様だからです。」

「そう……なの?」

「ですです!!」

満面の笑み。

咲は数秒黙った。

そして結論を出した。

良く分からない。

翌日。

「律人君。」

「はい!」

「斬ったカタストを組み立ててキメラ作るの辞めようか。」

無明は心底不思議そうな顔をした。

「え?」

「かっこよくないですか?」

咲は額を押さえた。

「そういう問題じゃないんだよなぁ……。」

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