一番
変えの効かない何かになりたい。
何故か。
生まれたからだ。
それ以外に理由は無い。
一番になりたい。
そうすれば代わりは居ない。
努力すれば良い。
芽が出れば、それが才能だ。
その筈だった。
だが。
結局、一番にはなれなかった。
何を今更馬鹿な事を考えているんだろう。
少し考えれば分かる事だ。
才能がある人間。
努力出来る人間。
そんな人間が自分だけな筈がない。
芽が出たから何だと言うんだ。
同じように芽が出た人間など、いくらでも居る。
だから努力を辞める?
論外だ。
そんな事をしたら、変えの効かない何かになるどころか、ただの凡人で終わる。
頑張ればいつか。
いつか報われる。
いつか追いつける。
――いつかって、いつ?
あの人はこれが出来る。
あの人はあれが出来る。
本当の化物は、評価の為になんて努力しない。
好きだからやる。
楽しいからやる。
気付いたらやっている。
そんな連中だ。
打算で動く時点で駄目なのだろう。
打算以前に動ける人間が、化物になる。
自分はなれない。
だからせめて。
その化物達を利用した方が効率が良い。
そう考えて生きてきた。
だが――
咲はゆっくりと目を開けた。
朝だった。
「……ん。」
ぼんやりと天井を見上げる。
「今日は加藤さんの信用を得るか。」
小さく呟く。
「あの人、発言力高いし。」
「利用価値はある。」
淡々とした口調。
まるで今日の予定を確認するかのようだった。
「あの人、細かい計画立てるの苦手そうだし。」
「そこをフォローすれば多分いけるかな。」
頭の中で段取りを組み立てる。
その時。
背中に何かがくっついた。
「……。」
ぎゅう。
咲の体が抱き締められる。
振り返る。
無明だった。
目は閉じたまま。
完全に寝ぼけている。
「律人君起きたんだ。」
返事は無い。
ただ離れない。
咲は少しだけ笑った。
「はいはい。」
優しく抱き締め返す。
すると無明の体から力が抜けた。
安心したように、再び眠り始める。
「気楽だなぁ、律人君は。」
咲は苦笑する。
昨日もカタストの死体を組み合わせて遊ぼうとしていた。
思い出しただけで頭が痛い。
「子供用のおもちゃでも買ってあげるか。」
カタストよりはマシだろう。
多分。
咲はそう結論付けた。




