下から
咲は資料へ目を落とした。
「律人君……上手く行きそうかな。」
順調だった。
問題は上層部。
流石に直接取り入るのは難しい。
「まぁ、下から固めれば何とかなりますか。」
◇
一週間後。
咲は廊下で山口を見つけた。
「あ、山口さん。」
「ん? 咲さん。どうしました?」
「少し気になる事がありまして。」
咲は手に持っていた資料を開く。
「この数字、合ってます?」
山口は資料を覗き込んだ。
「あれ?」
眉を顰める。
「でも俺が見た資料だと……。」
「こっちです。」
咲は別の資料を差し出した。
山口は目を瞬かせる。
「こんなのあったっけ?」
「デスクの端にありましたよ。」
咲は苦笑する。
「山口さん、資料の管理雑ですから。」
「あー……。」
山口は頭を掻いた。
思い当たる節があった。
「駄目ですよ。」
「紛失したら怒られますよ?」
「耳が痛いなぁ。」
山口は苦笑した。
咲は自然な動作で別の資料を取り出す。
「あ、そうだ。」
「ついでに一つお願いが。」
「ん?」
山口は資料を受け取る。
無明律人の運用権限に関する申請書だった。
「これ承認お願いできます?」
山口は内容へ目を通す。
「運用補佐?」
「はい。」
咲は頷いた。
「討伐効率の向上を目的としたものです。」
「現場との連携も取りやすくなりますし。」
山口は小さく唸る。
重要な書類だ。
即決出来る内容ではない。
だが内容そのものに問題は見当たらない。
「まぁ……。」
しばらく考えた後、ペンを手に取る。
「俺一人の承認で通るかは分からないけど。」
「回してみるよ。」
咲は嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとうございます。」
山口と別れた後。
咲は人気のない廊下を歩く。
そして小さく呟いた。
「三人目。」
少し考える。
目標は後二人。
「間に合わせますか。」
どこか楽しそうだった。




