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才能

「はい、パンケア奪還。」

灯が満足そうに言う。

春は深いため息を吐いた。

「灯さんの冷気を操るの面倒くさいんですから勘弁してください。」

「そういえば、なんで操れるの?」

灯が首を傾げる。

春は当然のように答えた。

「べシュルツでレベル1になった灯さんに絶対命令しただけですけど。」

「ん?」

灯が固まる。

「初耳なんだけど。」

「今言いましたから。」

数秒の沈黙。

「……次からは確認取ってね。」

「え? 何か問題ありましたか?」

春は不思議そうに首を傾げる。

「勝つ為に必要でしたし。」

「気持ちの問題。」

灯は即答した。

「それにしても良いなぁ、この武器。」

手にした針を眺める。

「アストライト鉱石を断熱材で包んだだけなのに。」

「熱伝導率が異常ですからね。」

「病原菌も春が体内だけに冷気展開してくれたし。」

「だから練習してくださいよ。」

「まぁまぁ。」

灯は適当に受け流した。

そして、ふと思い出したように春を見る。

「そういえば春。」

「なんですか?」

「出来ない人の気持ちってどんなのなの?」

春は真顔になった。

「急に嫌味言うじゃないですか。」

「違う違う。」

灯は苦笑する。

「咲って人、思ったより危険かも。」

「ん?」

「学校から知人まで全部調べたんだけどさ。」

春が呆れた顔をする。

「一旦無視して聞きます。」

「努力はするし器用。」

「だけど妙に挫折が早いんだよね。」

「色んな分野に手は出す。」

「でも、ある日ピタッと辞める。」

「そしていつの間にか人を頼る側になってる。」

春は首を傾げた。

「良い事では?」

「普通ならね。」

灯は少しだけ目を細める。

「でも、咲さんの知人は全員が同じ事を言う。」

「恩人だって。」

春の眉が僅かに動く。

「へぇ……。」

「あり得ないでしょ。」

灯は肩を竦めた。

「全員が何かしらの問題を抱えて。」

「全員が咲さんに助けられてる。」

「証拠は無いけどさ。」

「何か仕組んでるんじゃないかって思うレベル。」

春は少し考える。

「観察眼が異常なんじゃないですか?」

「ほう。」

灯が興味深そうに身を乗り出した。

「無明君の影響だと思います。」

「なんでそうなるの?」

「飛躍してない?」

「してませんよ。」

春は即答した。

「昔の無明君、まともに話せなかったじゃないですか。」

「あー……。」

灯は納得したように頷く。

「それでも咲さんには懐いていた。」

「つまり。」

春は肩を竦める。

「話さなくても反応だけで相手を理解する癖がついたんじゃないですかね。」

「なるほどね。」

灯は感心したように頷く。

「それと。」

「ん?」

春は少しだけ遠くを見る。

「才能のあった俺の兄が、よく言ってました。」

「どんな事?」

「才能があって。」

「努力もして。」

「そこまでやって、ようやくプロの世界のスタートラインだって。」

灯は静かに笑った。

「厳しいねぇ。」

「現実ですから。」

春は淡々と答えた。

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