健康診断
「何馬鹿な事してるの?」
医療室で、叶は呆れた顔をしながら犬飼を睨んだ。
犬飼はベッドへ腰掛けたまま肩を竦める。
「いや……大丈夫だって。」
「大丈夫な訳ないでしょ。」
叶は即座に否定した。
「体のどこかは絶対やってる。」
「健康だから。」
「二十階から助走つけて飛び降りて、空飛ぶカタストを討伐したのは分かる。」
叶は一度言葉を切る。
「いや、ギリギリ分からないけど。」
犬飼は視線を逸らした。
「命綱なし、パラシュートなし、そのまま落下。」
「討伐できたから良いじゃん。」
「良くない。」
叶はため息を吐く。
「内臓やってるかもしれないし、骨折してるかもしれないし、とりあえず検査。」
犬飼は露骨に嫌そうな顔をした。
「面倒臭ぇ……。」
◇
三十分後。
叶は検査結果を見ながら固まっていた。
異常なし。
完全な健康体。
それどころか数値がおかしい。
「骨密度……三百五十八パーセント?」
思わず呟く。
犬飼はベッドの上で欠伸をした。
「だから言ったろ。」
「いや、意味分かんないんだけど。」
叶は資料を捲る。
骨密度が異常。
筋肉密度も異常。
人間の数値ではない。
「鉄かよコイツ……。」
犬飼は不思議そうに首を傾げた。
「褒めてる?」
「褒めてない。」
即答だった。
なんだか無性に腹が立つ。
叶は資料を机へ放り投げた。
そして満面の笑みで告げる。
「脳がやられてるね。」
「可哀想に。」
犬飼は真顔だった。
「検査項目に脳の検査無かったぞ。」




