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ヘリオス鉱奪還

「私も戦う。」

叶は当然のように言った。

犬飼は頭を抱える。

「一週間も徹夜したんだろ……。」

深いため息を吐いた。

「頭のネジが外れてもおかしくないよな。」

叶の額に青筋が浮かぶ。

「殺すぞ。」

犬飼は聞かなかった事にした。

叶は腕を組む。

「フンガーの能力は効かないよ?」

「脳のエネルギーを奪って思考出来なくさせるんでしょ。」

「思考継続が便利なのは分かったがな……。」

犬飼は呆れたように言う。

叶は頬を膨らませた。

「行くったら行くの!」

結局。

叶も討伐へ同行する事になった。

フンガー討伐戦。

犬飼は横目で叶を見る。

「なぁ。」

「後ろに下がってろよ。」

叶は聞いていない。

代わりに小さく呟いた。

「出てきて、ウルフ君。」

その瞬間。

叶の背後に無数の剣が現れる。

不変のレーゲル――ウルフェレンダーリヒ。

かつて無明によって斬り刻まれたレーゲルだった。

不変であるが故に死なず。

斬り刻まれた後、灯によって凍結され保管されていた存在。

複数の剣の集合体だったそれは、今では一本の剣として再構成されていた。

叶に服従し、ウルフという名を与えられて。

犬飼は遠い目をした。

「もういいや……。」

諦めた。

今さら何を言っても無駄だと理解したからだ。

一方で。

フンガーは機嫌を損ねていた。

自身の能力が効かない存在が三つも目の前に居る。

犬飼。

叶。

そしてウルフ。

気分が良いはずがなかった。

叶は脳波でウルフを操る。

剣は空を駆け。

縦横無尽にフンガーを切り裂いた。

フンガーの体に次々と傷が刻まれていく。

だが。

叶は知らなかった。

カタストが死に際に何をするのかを。

対策課では有名な話だった。

カタストは一撃で即死させろ。

その理由を叶は知らない。

死を悟ったカタストは最後の力を振り絞る。

一人でも多く道連れにする為に。

命を燃やす。

「え?」

叶が目を見開く。

次の瞬間。

フンガーが爆発的な速度で踏み込んだ。

狙いは叶。

その喉元へ牙が迫る。

だが。

その前に犬飼が動いていた。

「だーから。」

犬飼はため息を吐く。

「家でゲームでもしてろって言ったのに。」

蹴りがフンガーの横腹へ突き刺さる。

フンガーの体が地面へ叩き付けられた。

さらに犬飼は空中のウルフを掴み取る。

強引に振り下ろした。

銀閃。

フンガーの体が真っ二つになる。

沈黙。

そして犬飼は肩を竦めた。

「はい。」

「ヘリオス鉱奪還。」

帰還後。

叶は少しだけ申し訳なさそうに俯いた。

「うーん……ごめん。」

犬飼は気にした様子もない。

「カジノでポーカーするか。」

叶は即答した。

「する……。」

数時間後。

犬飼は後悔していた。

叶は自前の観察眼だけで卓を支配した。

次々とチップを巻き上げる。

犬飼の財布も例外ではない。

最終的な被害額。

六十万円。

犬飼は天井を見上げた。

「やっぱゲームしてろ。」

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