理不尽ゲームと選択
突如として、人類の刻印が一斉に光り出した。
白雪灯が自分の左手を見て、淡々と言う。
「……変だね。君の刻印と“繋がってる”」
次の瞬間、頭の内側に声が響いた。
「今から“暴力禁止”。話し合え。誰が死ぬかを選べ。片方が死ななければ、どちらも死ぬ」
「制限時間は一時間。存分に話し合ってくれ」
神の声が消える。
静寂。
灯がこちらを見る。
「で、どうする?」
「決まってます。自分が死ねばいい」
君は当たり前のように答える。
灯は一瞬だけ目を細めた。
「優しいね。私には」
「……はい?」
君が聞き返す。
「その選択だと、他は死ぬよね。人類、半分くらい消える」
言葉が止まる。
灯は肩をすくめる。
「まあいいよ。君の意見なら」
沈黙が落ちる。
灯が続ける。
「一時間後、発言は君でいい?」
「……灯さんは、死ぬ覚悟ありますか」
君が問う。
「“自分の意見”で言いな」
灯が即座に返す。
「……分かりました」
時間が過ぎる。
残り、十秒。
刻印が再び強く光る。
「十秒以内に答えを――」
神の声が告げる。
「神様」
君が被せる。
一瞬、間。
「……なんだ?」
神が返す。
「選ぶのは“神様”だ」
君は言い切る。
「何故そうなる?」
その瞬間、違和感が確信に変わる。
――“誰が死ぬかを選べ”
(二人の内、とは言ってない)
「ルールは“誰が死ぬかを選べ”だ。“二人の内”なんて一言も言ってない」
君は淡々と続ける。
「なら、対象は限定されてない。神様でもいい」
「……なるほど」
神がわずかに笑う気配を見せる。
「もちろん、これで俺たちも死ぬかもしれない。でも道連れだ」
君が言う。
短い沈黙。
次の瞬間、爆笑が響いた。
「いいね。そこ突くんだ」
神の笑いは止まらない。
「参った。今回は君の勝ちだ。ゲームクリアでいい」
「それが狙いだったろ?」
「分かってるなら、さっさと消えろ」
君が吐き捨てる。
「はいはい」
神が軽く返す。
光が、ふっと消える。
静けさが戻った。
「カッコいいじゃん」
灯が距離を詰め、抱きつく。
「……」
君は何も答えない。
「また黙るんだ」
灯がくすりと笑う。
「でもいいよ。今の選択、嫌いじゃない」
満足そうに、灯は目を細めた。




