斬る?
住宅街を二人で歩いていた。
無明は隣を歩く咲を見上げる。
そして不思議そうに首を傾げた。
「ん?」
「斬り刻んじゃ駄目なんですか?」
咲は一瞬固まった。
「あー……うん。」
「そうだよ。」
無明はさらに首を傾げる。
「どうしてですか?」
咲は少し悩む。
どう説明すれば良いのだろう。
「えーっと……。」
「良くない事だからかな?」
「そうなんですか。」
無明は素直に頷いた。
そして次の質問をする。
「咲様の敵でもですか?」
「駄目。」
即答だった。
無明はますます分からなくなる。
「ん?」
「斬り刻んじゃ駄目ならどうすれば良いんですか?」
咲は頭を掻いた。
難しい。
とても難しい。
「えーっと……。」
「とにかく斬り刻むのは駄目。」
無明は少し考える。
そして頷いた。
「まぁ、咲様が言うなら。」
咲は思わず笑った。
「偉い偉い。」
「えへへ。」
無明は少し嬉しそうだった。
その時。
物陰からカタストが飛び出した。
無明が反応する。
「あ。」
次の瞬間。
カタストは細切れになっていた。
沈黙。
咲は細切れになったカタストを見る。
無明も見る。
そして。
「あ。」
無明が気まずそうな顔をした。
「すみません。」
「能力の副次的な最適化で自動的に斬っちゃうんです。」
咲は頭を抱えた。
「うーん……。」
少し考える。
「なるほど。」
そして小さく頷いた。
「今回は良いよ。」
無明は不思議そうに聞く。
「どうしてですか?」
「危なかったじゃん。」
咲は当然のように答えた。
無明は考える。
「咲様の敵も危なくないですか?」
咲は言葉に詰まった。
「えーっと……。」
「その副次的な最適化ってどういう物なの?」
無明は即答する。
「咲様を守る行動が最適化されます。」
咲は空を見上げた。
「そっかぁ……。」
思ったより難しい。
しばらく悩む。
そして無明へ向き直った。
「人は斬っちゃ駄目だよ。」
「そうなんですか?」
無明は素直に聞く。
「危険ならどうすれば良いんですか?」
咲は少しだけ笑った。
そして無明の頭を撫でる。
「律人君なら。」
「斬り刻まなくても守ってくれるでしょ?」
無明の目が少しだけ輝いた。
「はい!」
即答だった。
咲は優しく頭を撫でる。
「よしよし。」
無明は嬉しそうに目を細めた。




