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味方が出来た

【アストライト鉱】

神との聖戦以前より存在が確認されていた超希少金属。

正式名称は「アストライト」。

現在の文明を支える最重要資源の一つとされている。

アストライト最大の特徴は、その異常な物性にある。

まず鋼鉄の約三分の一という軽さを持ちながら、強度は特殊鋼を大きく上回る。

さらに三千度を超える高温環境下でも変質せず、熱伝導率も極めて高い。

そして何より、電気抵抗が異常に低い。

一般的な銅線と比較して十倍以上の導電効率を誇り、送電時の損失を大幅に抑制する事が可能である。

その特性からスマートフォン、コンピューター、発電施設、医療機器、軍事兵器、宇宙開発まで、あらゆる分野で使用されている。

現代社会はアストライト無しでは成立しないと言われるほどだ。

しかし世界最大級のアストライト鉱山は現在、土地神ウルフェレンダーリヒの支配領域となっている。

その影響は世界規模で発生した。

電子機器価格の高騰。

発電効率の低下。

軍需産業の停滞。

物流網の混乱。

特に一般市民への影響は深刻であり、スマートフォンの平均価格は侵攻以前の約三倍にまで上昇したとされる。

対策課がウルフェレンダーリヒ討伐を急ぐ理由は、人類の生存圏拡大だけではない。

文明そのものを取り戻す為でもある。


「いやー、結局斬り刻んだね。」

灯は遠くの鉱山を見ながら呟いた。

ウルフェレンダーリヒ。

不変のルールを押し付けるレーゲル。

対策課が頭を悩ませていた存在は、結局いつも通り斬り刻まれて終わった。

「咲様の敵なら仕方ないですよ。」

無明は特に気にした様子も無い。

灯は苦笑する。

「まぁ、そうなるよね。」

風が吹く。

世界最大級のアストライト鉱山が視界の先に広がっていた。

「アストライト鉱山、奪い返せたねー。」

「ふーむ。」

無明は首を傾げる。

「良い事ありますかね?」

「土地神、それもレーゲルが住んでた土地だよ?」

灯は楽しそうに笑った。

「アストライト鉱山とは言え、タダ同然で買えた。」

「それが何か?」

「売ろうか!!」

無明は少し考える。

「良いんですか? それって。」

「良いんじゃない?」

灯はあっさり答えた。

「管理面倒だし。」

その後。

灯は各国との交渉に参加した。

そして。

「十兆かぁ……。」

契約書を眺めながら呟く。

「ゴネられても面倒だからその値段で売ったけど。」

灯は肩を竦めた。

「もっと行けたよね。」

「まぁ。」

灯は続ける。

「他国の復興支援に資金と人員を最大限投入する条件も付けたし。」

「そんなもんでしょ。」

帰り道。

無明が聞く。

「どのくらい高いんですか?」

灯は少し考えた。

「高すぎて良い例えが思いつかない。」

「へぇ。」

無明は素直に頷く。

「何を買います?」

灯は逆に聞き返した。

「無明君は何が欲しいの?」

「ん?」

「買ってあげるよ。」

無明はしばらく考え込む。

灯も考える。

無明にとって一番欲しい物は何だろう。

咲。

それ以外に何があるのだろう。

分からなかった。

だからせめて。

話せるようになるまで失った時間を少しでも取り戻して欲しいと思った。

「うーん……。」

無明は悩む。

そして答えた。

「別に欲しい物は無いですよ。」

「そう?」

「はい。」

無明は少しだけ笑った。

「味方が咲様以外にも出来ましたし。」

灯は一瞬だけ言葉を失う。

そして小さく笑った。

「そっか。」

それ以上は何も言わなかった。

灯は十兆円の使い道を決めた。

プライベートジェット。

専属パイロット。

専属運転手。

理由は単純だった。

「もう空港で薬物検査されたくない。」

切実な理由だった。

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