表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
73/119

道徳って難しいね ニ

春は教科書を開いた。

「今日は人を信じることについて学びます。」

廊下の隅では灯と犬飼が見学していた。

当然である。

前回の道徳の授業は大惨事だった。

---

春は教科書を読み上げる。

「ともだちを しんじる。

たろうくんは ともだちと いっしょに あそんでいました。

すると、ともだちが いいました。

『ぼくに まかせて。』

たろうくんは すこし ふあんでした。

でも、ともだちを しんじることにしました。

すると、ともだちは がんばって やくそくを まもりました。

たろうくんは うれしくなりました。

ひとを しんじることは とても たいせつです。」

春は本を閉じた。

「はい、無明君。」

「はい。」

「人を信じることは大切ですね。」

「はい!」

元気な返事だった。

春は少し安心する。

「無明君が信じているものは何ですか?」

「咲様です。」

即答だった。

春は一瞬だけ言葉に詰まる。

「……まぁ、良いでしょう。」

気を取り直して続ける。

「では、人に裏切られたらどうしますか?」

「斬り刻みます!」

沈黙。

廊下から吹き出す音が聞こえた。

「ぶっ……!」

灯だった。

犬飼も肩を震わせている。

春は額を押さえた。

「……斬り刻む以外でお願いします。」

無明は不思議そうに首を傾げる。

「どうしてですか?」

「どうしてと言われても……。」

春は必死に言葉を探した。

そしてようやく答えを見つける。

「他の意見も大切です。」

「色んな視点から考えてみましょう。」

「なるほど。」

無明は真剣に頷いた。

「分かりました!」

春は安堵する。

「はい。」

「改めて、どうしますか?」

無明は少し考え込んだ。

そして顔を上げる。

「犬飼が言ってました。」

嫌な予感しかしない。

「パチンコに行けば人生の全てが解決するらしいです。」

廊下の空気が凍る。

無明は満面の笑みだった。

「なのでパチンコに行きます。」

次の瞬間。

バシッ!

乾いた音が響いた。

犬飼の後頭部に灯の手が炸裂する。

「いてぇ!」

「無明君に何教えてんの!?」

灯は本気で呆れていた。

犬飼は頭を押さえながら抗議する。

「教えてねぇよ!」

「言っただけだ!」

「同じだわ!」

二人が言い争う中、無明は首を傾げる。

「違うんですか?」

春は静かに教科書を閉じた。

そして遠い目をする。

「人を信じるって難しいですね……。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ