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釣りと道連れ

「釣り、してみたかったんですよね。」

無明は楽しそうに海を見つめていた。

隣で灯が頷く。

「良いじゃん。」

「楽しそう。」

無明は真剣な顔で竿を握る。

「全然引っかかりませんね。」

「そんなもんだよ。」

灯は適当に答えた。

当然だった。

この海域には土地神が居る。

魚はほぼ喰い尽くされている為、まともな釣果など期待出来ない。

今回無明を連れて来た理由も釣りではない。

土地神が船を攻撃する前に討伐する為だ。

海面が大きく揺れた。

次の瞬間。

巨大な影が海中から飛び出す。

「釣れました!!」

無明が嬉しそうに叫ぶ。

現れたのは魚ではない。

土地神だった。

灯は思わず吹き出した。

「違う違う。」

しかし。

土地神が口を開くより早く。

無明は首を傾げる。

「ん?」

「凶暴ですね。」

その瞬間。

土地神の体が細切れになった。

海面へ肉片が降り注ぐ。

灯は肩を竦めた。

「良かったじゃん。」

「釣れたじゃん。」

無明は首を横に振る。

「楽しみはこれからです。」

「ん?」

無明は当然のように言った。

「テレビで見ました。」

「釣った魚は捌いて食べるそうです。」

嫌な予感がした。

「白雪さんも一緒に食べましょう。」

「あー……。」

灯は視線を逸らす。

「それ魚じゃないから。」

「食べられないんですか?」

「知らない生き物だし。」

「毒とかあるかもじゃん。」

無明は少し考える。

そして船の隅に座っていた犬へ視線を向けた。

正確には犬ではない。

カタストだった。

無明が飼っている例の犬である。

無明は土地神の肉片を拾い上げる。

そして犬の口へ放り込んだ。

「…………。」

灯は何も言わない。

数分後。

犬は元気だった。

むしろ嬉しそうだった。

「やった。」

無明が笑顔になる。

「毒は無いみたいですね。」

「いや……。」

灯はまだ抵抗する。

「食べないんですか?」

「えっと……。」

灯は必死に言い訳を探した。

「お腹いっぱい。」

無明は首を傾げる。

「さっき。」

「お腹空いたから現地の食べ物を楽しみにしてるって言ってましたよね。」

「…………。」

覚えていた。

余計な所だけ覚えている。

灯は諦めた。

「いただきます。」

恐る恐る口へ運ぶ。

数秒後。

灯の動きが止まった。

「美味しい。」

その一言が全てだった。

無明は嬉しそうに笑う。

「良かったです。」

灯は無言で土地神の肉を追加で回収した。

そして対策課へ帰還する。

数日後。

対策課では謎の騒ぎが発生した。

「これ美味しいですね。」

「確かに。」

「また食べたいです。」

「どこで獲れたんですか?」

全員が絶賛していた。

そして灯は満足そうに言う。

「土地神。」

沈黙。

数秒後。

対策課中から悲鳴が響いた。

「お前何食わせた!?」

「道連れ。」

灯は満面の笑みだった。

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