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お勉強

「あー、楽しかったー。」

土地神討伐を終えた灯が対策課へ戻る。

その瞬間。

春が書類を持って現れた。

「土地神討伐を旅行だと思わないで下さい。」

「いいじゃーん。」

灯は悪びれた様子もない。

春は無言で書類を差し出した。

「討伐報告書を作成して下さい。」

「あ、急用思い出した。」

灯は踵を返す。

「待って下さい。」

「頑張ってねー。」

春の制止も聞かず、そのまま逃げるように廊下を歩く。

すると。

廊下の端に無明の姿を見つけた。

「あれ? 無明君じゃん。」

無明はベンチへ座り、一冊の絵本を開いていた。

「あ、こんにちは。」

「絵本読んでるの?」

「どうやら働かないのはニートらしく悪い事らしいです。」

無明は真面目な顔で答える。

「けど文字が読めないので勉強中です。」

灯は思わず笑った。

「順調?」

「絵本は面白いです。」

「そう。」

灯は頷く。

「そのまま頑張って。」

「はい。」

少し考えた後、灯が言った。

「先生手配してあげるよ。」

無明が顔を上げる。

「え? 良いんですか?」

「良いよー。」

その時だった。

「灯さん!」

後ろから春の声が聞こえる。

書類を持ったまま追いかけて来ていた。

「討伐報告書――」

灯は無明を指差した。

「ほら来た。先生。」

「え?」

春が固まる。

灯は笑顔だった。

「無明君に文字とか小学校レベルの勉強教えてあげて。」

「いや、なんで……。」

春は心底嫌そうな顔をした。

灯は不思議そうに首を傾げる。

「無明君が居なかったら神がアナフィラキシー起こす前に私達死んでたよね?」

春は数秒沈黙した。

「……。」

「……分かりました。」

観念したように肩を落とす。

そして無明へ向き直った。

「無明さん。」

「何を勉強したいんですか?」

無明は少し考える。

「確率です。」

春が目を瞬かせた。

「確率?」

「はい。」

無明は頷く。

「犬飼がギャンブルする時によく言ってるので。」

嫌な予感がした。

「どんな事ですか?」

「五十パーセントを二回外した。」

「二回合わせて百パーセントなのに何故当たらないんだと叫んでました。」

春は頭を抱えた。

「なるほど……。」

灯は優しく無明の肩を叩いた。

「無明君。」

「はい。」

「一つだけ大事な事を教えてあげる。」

灯は諭すように言う。

「犬飼みたいな大人は手本にしちゃ駄目だよ。」

「そうなんですか?」

「そうだよ。」

春も無言で頷いた。

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