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銀色の砂漠

銀色の砂漠に二人は立つ。

かつて住宅街だった場所。

風が吹く度に、砕かれた文明の残骸が舞い上がる。

一人は神を拒絶する者。

一人は現実を拒絶する者。

「懐かしいですね、ここ。咲様との思い出が沢山あります。」

無明はどこか懐かしそうに呟いた。

犬飼は周囲を見渡す。

住宅街を砂に変えた男の言葉とは思えなかった。

「なぁ、無明……お前にとっての味方ってなんだ?」

犬飼は真剣な表情で問いかける。

神の力を無効化する自分であっても、この男は斬るかもしれない。

そんな予感があった。

「咲様ですよ。」

即答だった。

「そういう事を聞いてるんじゃない。どういう存在をお前は味方と定義するんだ?」

「僕を裏切らない、見捨てないのが味方ですよ。」

「裏切られたり見捨てられたりした事があるのか?」

「無いですよ。」

犬飼は思わず言葉を失った。

無明は不思議そうに首を傾げる。

「僕は最初から要らない存在なんです。見捨てられすらしない、拾われない人間です。」

「そんな中、咲様が現れたんです。」

無明は少しだけ目を細めた。

「初めて僕を皆に入れてくれた存在。それが咲様です。」

「お前は誰かを拾ってやったり、味方になるって発想は無いのか?」

「うーん……考えた事無いですね。」

「どうしてだ?」

「さぁ? やり方が分かりませんし。」

犬飼は小さく息を吐く。

「見下しても良いですよ。」

無明は淡々と続けた。

「慣れてます。生まれた時からそうなんです。周りと上手くいかない。」

少しだけ笑う。

「だけど大丈夫です。何故なら咲様が居ますから。」

「俺達の味方になる気はあるのか?」

「お断りします。」

即答だった。

「許可したのは神を殺す事を手伝う事です。」

「なんで味方になるのは断るんだ?」

「いつ見捨てるか分からないなら最初から要りません。」

「やってみないと――」

「分からない?」

無明は犬飼の言葉に被せた。

その声には僅かな苛立ちが混じっていた。

「期待したら傷つく。」

「人生は器用な人間が勝つんですよ。」

無明は視線を落とす。

「あー……また駄目だった。」

「これを何回繰り返せば良いんですか?」

「何回繰り返せば報われるんですか?」

犬飼は答えない。

無明は自嘲するように笑った。

「分からない。それなら最初から諦める方が妥当では?」

しばらく沈黙が流れる。

やがて犬飼が口を開いた。

「咲って奴も同じ意見なのか?」

無明の表情が僅かに変わる。

「……。」

「言ってたよな。」

犬飼は続ける。

「皆の味方だって。」

「お前もその中に入ってるんだろ?」

「咲様を侮辱する気ですか?」

無明の声が低くなる。

「疑問を口にするだけだ。」

犬飼は肩を竦めた。

「お前の味方ってのは、お前の成長を止める存在なのか?」

「世の中出来る人間だけじゃない。そんなのは分かりきった――」

「咲はお前の事を信じて無いみたいだな。」

空気が変わる。

「神の力を無効化するからって殺せないとでも?」

無明の目から感情が消える。

「僕の能力の副次的な最適化はオートプログラム。」

「咲様を守る行動全てに最適な行動が出来る。」

まるで警告だった。

だが犬飼は動じない。

「咲に味方ってのは、成長を諦めて馴れ合う為の物なのかって意味で聞いたんだが。」

「……。」

「咲様に聞かないと、どうすべきか分からないのか?」

「自分がどうしたら咲が喜ぶか分からないのか?」

長い沈黙。

やがて無明は視線を逸らした。

「……チッ。」

小さく舌打ちする。

「裏切ったら全員斬り刻む。」

犬飼はようやく笑った。

「味方って事でよろしくな、無明。」

無明は心底面倒そうに肩を落とす。

「分かりましたよ。」

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