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斬れて当然

「咲様が僕に優しい理由ですか?」

無明はきょとんとした顔をする。

「あー、気になってな。」

犬飼は珍しく言葉を選ぶように続けた。

無明は当然のように答える。

「咲様は皆に優しいですから。」

「自分にだけ優しくしてくれるとかじゃないのか?」

犬飼の問いに、無明は不思議そうに首を傾げた。

「咲様の優しさに仲間外れは居ませんよ。」

「なんでそんなに言い切れるんだ?」

「咲様だからです。」

あまりにも当然という口調だった。

犬飼は小さく肩を竦める。

「あー、信頼してるんだな。」

無明は少しだけ眉を顰めた。

「咲様を信じられないとか、人間不信にも程がありますよ。」

犬飼は思わず苦笑する。

「そうか……。」

少し間を置いてから、別の質問を投げた。

「神と戦うとして、斬れるのか?」

「さぁ?」

予想外の返答に犬飼が眉を上げる。

「斬れないのか?」

「咲様の敵なら斬りますけど、敵じゃないなら斬らないですね。」

「そういう話じゃなくてな。」

犬飼は頭を掻いた。

「咲の敵だったとしても相手は神だぞ?」

無明はますます不思議そうな顔をした。

「いや、だから咲様の敵ですよね。」

まるで何を言っているのか分からないと言いたげだった。

「普通に斬りますけど。」

犬飼はしばらく黙り込んだ。

そして静かに尋ねる。

「なんでそんなに咲って奴に執着するんだ?」

無明は少しだけ目を瞬かせた。

「執着?」

その言葉自体が意外だったらしい。

そして穏やかに笑う。

「咲様が僕の味方だからです。」

「敵とか味方とか、そんなに重要か?」

犬飼の問いに、無明は深く溜息を吐いた。

呆れたような、諦めたような声音だった。

「……持ってる側の人間の戯言を吐かないで下さい。」

犬飼は何も言わない。

無明は静かに続ける。

「咲様は皆の味方です。」

その言葉だけは断言だった。

「そして僕は咲様の味方なんです。」

無明の表情から笑みが消える。

「なら、咲様の敵は斬り刻む。」

当然の事を語るように。

呼吸をするように。

無明はそう言った。

「当然の事です。」

犬飼はしばらく無明を見つめていたが、やがて小さく息を吐いた。

「そうか……。」

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