幸せであるべき
「無明君?」
叶が無明へ声を掛ける。
(目的は彼を運用する為に出来るだけ情報を集める事。白雪さんに頼まれたし頑張れ私)
無明がゆっくり振り返った。
「どちら様ですか?」
「白雪さんの友達だよー。」
「そうなんですか。」
叶は曖昧に笑う。
「あ、うん。少し話せる?」
無明はすぐ隣を見るように視線を向けた。
「咲様、どうします?」
叶が思わず口を挟む。
「いや、自分で決めなよ」
無明が不思議そうに首を傾げた。
「どうしてですか?」
「え……いや、その。」
叶が言葉に詰まる。
だが無明はすぐ納得したように頷いた。
「あ、はい。分かりました咲様」
叶が眉を顰める。
「どっち?」
「咲様が話してあげてって言うので……まぁ、なんの話ですか?」
叶は一度間を置いた。
「…………。咲さんの事好きなの?」
無明は当然のように答える。
「そりゃ、咲様は皆に優しいですからね。」
「皆に優しい人が好きなの? 他にも沢山居そうだけど。」
その瞬間、無明が小さく笑った。
「普通の人は皆の中に僕が含まれて無いじゃないですかー。」
叶は反射的に否定する。
「そんな事無いと思うけど。」
だが無明は静かに問い返した。
「どうして言い切れるんですか?」
叶は言葉を失う。
「あー……うん。確かに言い切れないかもね」
「ですよね」
無明はどこか安心したように頷いた。
叶は気を取り直す。
「あー……咲さん以外の言う事聞くのは駄目そう?」
「そこまでじゃ無いですよ。咲様が許可すれば言う事聞きますよ。」
「そうなんだ」
叶は探るように質問を続ける。
「あー……他に好きな人が出来たりしないの?」
無明は少し考える仕草を見せた。
「咲様以外ですか? 僕の味方をしてくれるなら好きになるんじゃ無いですか?」
「へー……なら他にも好きな人居る感じ?」
無明は不思議そうに瞬きをした。
「ん? 居ないですけど。」
「え?」
「いや、僕の味方してくれるなら好きになるって言ったじゃないですか。」
「確かにね。」
叶は苦笑する。
しばらく沈黙が流れた後、叶が静かに尋ねた。
「…………。ねぇ、幸せ?」
無明は即答した。
「咲様が居て不幸なんて事あり得ます?」
「いや、あるかもじゃん」
無明は少しだけ首を傾げる。
「咲様は僕が不幸だと悲しみますから。だから僕は幸せであるべきなんですよ。」
「そ、そうなんだ。」
叶は乾いた笑みを浮かべる。
(ごめん、白雪さん。運用出来ない)




