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刻印
パチンコ店の喧騒の中、恋宮叶は足を止めた。
「何してんの?」
恋宮叶が声をかける。
犬飼優人は視線も向けず、ハンドルを回したまま答える。
「パチンコ」
当然だろ、とでも言いたげな声音。
「業務時間内なんだけど。居場所聞いたらここって言われて、普通に驚いたんだけど」
叶が呆れたように言う。
「なんで居場所聞いてんだよ」
優人は興味なさげに返す。
「いや……」
言葉が途切れる。
叶の視線が、無意識に優人の左手へ落ちた。
止まる。
「……え?」
思考が追いつかない。
「何で生きてるの?」
叶の声がわずかに震える。
「流石に失礼過ぎないか?」
優人は変わらない調子で返す。
「だって……左手に刻印、無いじゃん」
周囲の音が遠のく。
「付けられなかった人は死んだ。最初の奇跡で、人口の一割が消えた」
叶が絞り出すように言う。
「んなもん知ってる。常識だろ」
優人は淡々と答える。
「じゃあ、なんで……」
一拍。
犬飼優人は視線も向けずに言った。
「干渉されるのが鬱陶しかった。だから弾いた」
「えぇ……」
理解を拒むように、叶は一歩引く。
カチ、カチ、と機械音だけが響く。
「なぁ、頼みがあるんだが」
優人がようやく口を開く。
「あ、うん……何?」
叶はまだ混乱したまま応じる。
「今ので持ち金無くなった。金貸してくれ」
「死ね」




