日常 ニ
「おはよう、春」
眠たげな顔のまま、灯が寝室から出てくる。
髪は跳ねたままで、まだ半分くらい眠っていそうだった。
「おはようございます。朝ご飯は何を食べますか?」
キッチンに立つ春が、振り返りながら聞く。
「トムヤムクン」
灯はソファへ倒れ込むように座った。
「昨日の残りの肉じゃがですね、分かりました。」
「はーい。」
灯は適当に返事をしながらテーブルへ突っ伏す。
春は慣れた様子で朝食を並べていった。
二人は朝食を食べながら、取り留めのない雑談を続ける。
「灯さんの洗濯物、終わってますよ」
春が思い出したように言う。
灯は箸を止める事なく返した。
「取り込んどいて、春」
「自分でやってください。」
「なんでー」
不満そうに灯が顔を上げる。
「女性物ですよ。」
「ちぇー」
露骨に面倒そうな顔をしながら、灯は再び肉じゃがを口へ運ぶ。
春は小さくため息を吐いた。
場面は変わり、職場。
灯は椅子に座ったまま、書類を一切触らずぼんやりしていた。
「灯さん。仕事してください。」
春が淡々と言う。
「今から犬飼をからかいに行くんだけど。」
灯は悪びれもなく立ち上がる。
「仕事してください。」
「大丈夫大丈夫。すぐ戻るから。」
「その台詞で戻ってきた事ほぼ無いですよね。」
灯は聞こえていないふりをして、そのまま部屋を出て行こうとする。
春はまたため息を吐いた。
さらに時間が過ぎ、寝る前。
風呂上がりの灯は、眠そうに欠伸をしながら春へ近付く。
「春ー、一緒に寝よ」
当然のように言う。
「俺の寝室ありますよね。」
春は本を閉じながら即座に返した。
「じゃぁ、春の寝室で一緒に寝よ」
「そういう話してないんですけど」
灯は気にした様子もなく、春のベッドへ倒れ込む。
「……自分の部屋で寝てください。」
「やだー」
春はしばらく無言だった。
その後、小さくため息を吐く。
「せめて端に寄ってください」
「わーい」
灯は満足そうに毛布へ包まった。




