同棲理由
「そういえば、白雪さんって一ノ瀬くんと付き合ってるんですか?」
叶が何気なく灯へ尋ねる。
灯はソファに座ったまま、あっさり答えた。
「付き合ってはないよ。」
「え、でも同棲してるって聞きましたけど……。」
叶が不思議そうに首を傾げる。
灯は少しだけ考え、
「まぁね。春、私と出会う前かなりヤバい生活してたから。」
と軽く言った。
「へぇー。何してたんですか?」
叶が興味を持ったように前のめりになる。
「カタスト倒して、報奨金でその日暮らしの宿生活。」
「……ん?」
叶が眉を寄せる。
「でもライセンス無いと無理じゃないですか?」
灯が苦笑する。
「対策課のライセンス周りのセキュリティが厳重になった理由、春だから。」
「……どういう事です?」
叶が真顔になる。
灯はサラッと言った。
「対策課の人間の死体から、武器とライセンス盗んで使ってた。」
「は!? 普通に捕まるでしょ!?」
叶が思わず声を上げる。
灯は落ち着いた様子のまま続ける。
「その頃は、カタストが現れ始めてまだ時間経ってなかったからね。制度も管理もかなりガバガバだったんだよ。」
「うわぁ……。」
叶が若干引き気味に呟く。
灯は思い出したように続けた。
「でさ、流石に変だったんだよね。」
「何がです?」
叶が聞き返す。
「職場に来ない人間が、報奨金だけ受け取ってる。しかも討伐記録が妙におかしい。」
「おかしい?」
「強い個体倒してたり、討伐数が異常に多かったり。」
「確かに怪しいですね……。」
叶が納得したように頷く。
灯は肩を竦めた。
「だから、“まさかそんな事する奴居ないと思うけど、一応”って感じで派遣されたのが私。」
「へぇー……。」
叶は少し黙り込み、ふと思い出したように尋ねる。
「……ちなみに、捕まったらどうするつもりだったんですか?」
「それ、私も聞いた。」
灯が少し笑う。
「逃げるのかと思ったらさ。」
「違ったんですか?」
叶が目を瞬かせる。
灯は春の口調を真似るように淡々と言った。
「『捕まったら衣食住は確保出来るので』だって。」
数秒沈黙が流れる。
「……うわぁ。」
叶がドン引きした顔で呟く。
灯は苦笑する。
「合理的過ぎて逆に怖いよね。」
「いや、怖いですよ普通に……。」
叶が即答する。
灯はそんな反応を気にした様子もなく続けた。
「まぁ、そんな生活してたから、とりあえず家泊めた。」
「え? でも今は普通に給料貰ってるんですよね?」
叶が首を傾げる。
「うん。」
灯は当然のように頷いた。
「じゃあ、なんでそのまま同棲を……?」
叶が聞くと、灯は何でもない事のように言う。
「二人暮らし、楽しいじゃん。」
「お、おう……。」
叶は微妙な表情で頷いた。




