捕獲
全与の衝撃波が夜の公園を裂く。
犬飼は正面から全与と打ち合いながら、飛んでくる衝撃波から叶を庇い続けていた。
だが厄介なのはそれだけではない。
全与は掌の上で小さな鉄球を弄ぶと、そこへ衝撃波の力を纏わせる。
次の瞬間、弾丸のような速度で射出された。
犬飼は舌打ちしながら回避する。
神由来の力なら無効化できる。
だが鉄球そのものは物理。
避けなければ普通にダメージが入る。
更に厄介なのは、先程から叶と目が合っているにも関わらず、能力が発動していない事だった。
莫大な神の力によって、能力そのものを相殺している。
全与は余裕を崩さないまま、犬飼へ視線を向ける。
「足手まとい抱えて可哀想に。」
見下すような声音だった。
犬飼は軽く肩を鳴らす。
「2対1の間違いだろ。」
全与は鼻で笑う。
「冗談でしょ?」
犬飼も笑った。
「……あぁ、冗談だ。」
その瞬間。
空気が凍り付く。
冷気が一帯へ広がり、地面が白く染まっていく。
全与の表情が変わった。
「――3対1だったわ。」
「白雪灯!!?」
全与が目を見開く。
有り得ない。
白雪灯クラスの強者が近くに居れば、気配だけで察知出来る筈だ。
なのに、今まで全く感じ取れなかった。
困惑した一瞬。
「はい、お疲れ。」
犬飼の手が全与の肩へ触れる。
全与の顔が歪んだ。
「まだだ!!」
即座にナイフを抜き、犬飼へ突き立てようとする。
だが。
「3対1なの、忘れちゃった?」
叶が静かに全与を見つめる。
視線が交差する。
その瞬間。
全与の身体から力が抜け、膝から崩れ落ちた。
沈黙。
犬飼が小さく笑う。
「ナイス、一ノ瀬。」
その声と共に、暗闇の奥から春が歩いて来る。
先程の冷気。
あれは春が、灯の能力をコピーして再現したものだった。




