失敗作
夜の公園。
人気のないベンチに、犬飼と叶が並んで座っていた。
叶が空を見上げながら、小さく笑う。
「なんか、デートって感じがして良いね。」
「あぁ……そうだな。」
犬飼の返事はどこか上の空だった。
叶はじっと犬飼を見る。
「なんか適当じゃない?」
「いや、本当に来るのか?」
犬飼が周囲へ視線を向ける。
叶は呆れたように肩を竦めた。
「プライド高い奴が不意打ちなんてする訳ないでしょ。」
「しかも誘ってるのに来ないとか、有り得ないし。」
その瞬間。
「――お望み通り来たよ。」
背後から声が響く。
全与が街灯の下へ姿を現した。
犬飼はゆっくり立ち上がる。
全与は冷たい視線を向けた。
「ケリをつけようか、失敗作。」
その言葉に、叶が静かに口を開く。
「……自分が言われた事を言って満足?」
全与の表情が僅かに固まった。
叶は淡々と続ける。
「こっちも観察眼と推理力だけで、“宗教の神の子”って言われてたんで。」
「白雪さんには尻尾巻いて逃げる癖に、犬飼には強気なの可笑しくない?」
「しかも犬飼って、神由来の力を無効化出来るんだよ?」
「相性最悪でしょ。」
全与の眉がぴくりと動く。
叶は容赦なく踏み込んだ。
「父親の劣化版の自分が悔しくて仕方ない。」
「対して犬飼は、拒絶と差別化が出来てるから妬ましい。」
「――黙れ!!」
空気が震える。
その瞬間。
「超絶ツヨツヨ最強キック!!」
犬飼の蹴りが全与を吹き飛ばした。
全与の身体が地面を滑る。
静まり返った公園で、犬飼がぽつりと呟く。
「……やっぱこの技名ダサいって。」
叶は少しだけ笑った。
「カッコよかったと思うよ。」




