増幅と変換
犬飼が灯へ視線を向ける。
「神谷ってやつ、どう思う?」
灯は少し考え、静かに答えた。
「莫大な神の力を持ってる。」
「それはお前も同じだろ。」
「今から説明するね。」
灯は淡々と続ける。
「そもそも、“神の力”自体は誰でも微弱に持ってるんだよ。」
「神が能力を与える時、人間の肉体を変質させる。これが能力の副次的な最適化。」
「……なんで変質させると思う?」
犬飼は面倒臭そうに眉を寄せる。
「知らねぇよ。」
「神の力を増幅、変換する為。」
灯は自分の胸元へ指を当てた。
「私の体質、“神の恩恵を過剰に受け取る”。正確には、超高性能な増幅器なんだよ。」
「長い。結論。」
灯は露骨に嫌そうな顔をした。
「私は、小さい電気を莫大な出力に変える冷蔵庫。」
「神谷は、最初から莫大な電気を持ってる側。」
犬飼は数秒黙る。
「……オッケー、理解した。つまり凄いって事だな。」
「分からないなら説明させないで欲しいんだけど。」
灯は深い溜め息を吐く。
犬飼は気にせず続けた。
「で、どうやって神谷を倒す?」
「私が来た時点で、どうせ尻尾巻いて逃げるよ。」
灯は退屈そうに髪を払う。
「だから犬飼がタイマン。春には遠くで観測してもらう。」
「因みに勝てるの?」
「今の俺は無敵だ。」
灯はじっと犬飼を見る。
「……愛の力かな?」
犬飼は真顔で返した。
「カジノの経費が通った。」
数秒の沈黙。
灯は呆れたように笑う。
「死ねば良いのにね。本当に。」




