告白誘導
「……ねぇ。誰なの、あの人」
全与が消えた後も、叶は不安げな表情のまま呟いた。
「腹違いの兄弟だな、多分」
犬飼は軽い調子で答える。
「神の子供って……本当なの?」
「半信半疑だったが、今回ので確信した」
犬飼は全与が立っていた場所を見つめたまま言った。
「……どうするの?」
「チャンスだ」
「え?」
叶が目を瞬かせる。
「前に一ノ瀬が、“神を視認してないから解析できない”ってぼやいてたんだよ」
犬飼は口元を歪める。
「なら、アイツを解析すればいい。神の構造も分かるし、作戦も立てられる」
その言葉に、叶は僅かに顔を曇らせた。
「……けど、危ないよ」
「大丈夫だって」
犬飼はあっさりと言い切る。
「叶は俺が守るから」
叶は一瞬黙り込んだ。
「……なんで?」
「ん?」
「なんで、守ってくれるの?」
犬飼は少しだけ視線を逸らす。
「しーらね」
「ねぇ、告白の返事、まだなんだけど」
「…………」
犬飼は露骨に黙り込んだ。
「どうするの?」
「いやぁ、まぁまぁ……」
「私のこと嫌い?」
「嫌いじゃないけど」
「なら好き?」
「どうだろうなー」
犬飼がわざとらしく目を逸らす。
叶はじっと犬飼を見つめた。
「“はい”か“いいえ”でしか聞いてないんだけど」
「…………」
重い沈黙。
そして犬飼は突然、話を逸らすように口を開いた。
「……パチンコ打ちに行くか」
「答えてから行けばいいじゃん」
「いやまぁ、付き合わなくても守るから安心しろって」
「好きか聞いてるんだけど」
「…………」
犬飼は完全に視線を泳がせ始める。
そんな様子を見て、叶は少し楽しそうに笑った。
「もしかして、ビビってる?」
「んなわけ」
犬飼が即答する。
「なら答えて」
「……です」
「聞こえない」
「好きです」
「もっと大きい声で」
犬飼は観念したように顔をしかめた。
「好きだから!! もういいだろ!」
墓地に響く叫び声。
叶は満足そうに笑みを浮かべる。
「じゃあ、付き合ってよ」
「へいへい……」
犬飼が投げやりに返す。
その瞬間。
叶はスマホをひらひらと掲げた。
「よし、録音完了。あとで白雪さん達に聞かせよっと」
「……え?」
犬飼の顔が固まる。
「自分の気持ちも素直に言えないヘタレ」
「俺、なんかしたか?」
犬飼が本気で困惑した顔をする。
叶は楽しそうに笑った。
「日頃の行い」




