計画性
叶と犬飼は楽しげに話していた。
正確には、楽しそうなのは叶だけだったが。
「だからさぁ、“超絶ツヨツヨ最強キック”って絶対インパクトあると思うんだよね」
「うるせぇーー!!」
犬飼は露骨に顔をしかめる。
だが叶は全く気にした様子もなく、楽しそうに笑った。
「えー、良いじゃん。一番の推しなんだけどなぁ」
「言わねぇよ」
即答だった。
すると、横から灯が静かに口を挟む。
「詠唱破棄?」
数秒の沈黙。
犬飼はゆっくりと顔を覆った。
既に逃げ場は無かった。
夕方
灯の家では、春が真剣な表情で資料へ目を通していた。
「……刻印レベル、上がりませんね」
どこか不安げな声だった。
灯はソファへ座ったまま、気楽そうに肩を竦める。
「ヴルカーン討伐は全世界でニュースになったし、上がるとしてももう少し時間かかるんじゃないかな」
「いや……」
春は少し言いづらそうに視線を逸らす。
「敢えて言いませんでしたけど、ヴルカーンを討伐したからって、レベル10になるとは限らないんじゃ」
「大丈夫だって」
灯は即答する。
だが、その額には薄く冷や汗が浮かんでいた。
春はそれを見逃さない。
「……灯さんって、もしかして計画性無いとかですか?」
「失礼だなぁ」
灯は不満そうに頬を膨らませる。
「ちゃんと考えてるよ。全人類の過半数の賛成が必要なんだから、それをどうにかしないとね」
「神を倒す方法は?」
「舐めないでくれるかな。そっちも考えてる」
灯は自信満々に言い切った。
春は数秒黙り、それから恐る恐る尋ねる。
「……聞いても良いですか?」
灯は笑顔で春の肩へ手を置いた。
「春、任せたよ。これが作戦」
春は静かに顔を覆う。
「……聞かなきゃ良かったです」




