生還
空港のロビーで、叶は一人落ち着かない様子で立っていた。
ヴルカーン討伐。
最悪の事態も覚悟していた。
だからこそ、到着口から現れた灯と春の姿を見た瞬間、叶は駆け出していた。
「犬飼は!!」
叶の声には焦りが滲んでいた。
灯は一瞬だけ言葉を止める。
「犬飼は……」
その深刻そうな表情を見た瞬間、叶の顔から血の気が引いた。
だが次の瞬間。
「カジノ寄って飛行機の時間に間に合わなくて、帰宅一日遅れるって」
数秒の沈黙。
そして。
「死ねやアイツ!!」
空港へ、叶の怒鳴り声が響いた。
翌日。
帰還した犬飼は、職場へ顔を出した瞬間、上司に呼び止められる。
上司は疲れたような顔で、深く息を吐いた。
「犬飼。よく帰ってきてくれた」
「あ、これ経費でよろしくお願いします」
犬飼は悪びれもせず紙を差し出す。
上司は嫌な予感を覚えながら目を通した。
「……120万?」
眉間に皺が寄る。
「ヴルカーン討伐に必要な出費だったのか? 安い方だが、何に使った」
犬飼は平然と答えた。
「カジノで溶かしました。そんじゃー」
言うだけ言って、犬飼は足早にその場を去っていく。
上司はしばらく無言で固まっていた。
やがて、遠い目で呟く。
「……アイツ、クビにしようかな」
その後。
犬飼は職場で叶と再会した。
「はい、お土産の紅茶」
「お、ありがと」
叶は素直に受け取る。
そして、楽しそうに犬飼を見上げた。
「ヴルカーン戦について教えてよ」
「良いぞ」
犬飼は少し得意げに笑う。
だが、叶の次の一言で表情が固まった。
「それじゃ、まずは360度砲から教えてくれない?」
数秒の沈黙。
犬飼は静かに顔を覆う。
「……死ねやアイツら」




