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仕方がない

「恋宮さん」

 廊下を歩いていた叶に、春が声をかける。

 叶は足を止め、少し首を傾げた。

「一ノ瀬君?」

「犬飼さんと喧嘩でもしたんですか?」

 叶は困ったように笑う。

「喧嘩じゃないよ。……喧嘩の方がまだ良かったかも」

「そうなんですか」

「なんか気まずいし」

 春は特に表情を変えないまま続けた。

「三日後にはヴルカーン討伐ですよ?」

「うぅ……」

「正直、あの作戦は自爆と言っても過言じゃないです。死なせないつもりではいますけど、断言は出来ません」

 叶は頭を抱える。

「どうしよう……」

「後悔しない選択をすれば良いんじゃないですか?」

「簡単に言うね」

「難しいから後回しにして良い状況でもないですし。今回は」

 叶はしばらく唸った後、ちらりと春を見る。

「一ノ瀬君って、女の子から告白されたら嬉しい?」

「誰に言われるかによるんじゃないですか?」

「そこは喜ぶって言ってよ」

 春は少しだけ考える素振りを見せる。

「……喜びます」

「だよね」

 叶は一人で納得したように頷く。

「ヴルカーンと戦うんだし、元気出させた方が良いよね」

「あー……はい」

「犬飼のために仕方ないよね」

「はい」

 叶は何度も自分に言い聞かせるように頷く。

「しょうがないなぁ、本当に」

 春は数秒黙ったあと、静かに目を逸らした。

「…………」

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