探り
「あー!!!」
叶の叫び声が部屋に響く。
ベッドへ倒れ込みながら、叶は枕へ顔を埋めた。
「告白ってどうすれば良いんだろ……」
数秒悩み、すぐに顔を上げる。
「いや、普通に無理だわ」
叶は天井を見つめながら唸った。
「付き合ってくださいとか言ったら、“頭沸いてんのか?”って返ってきそう」
「そのまま殴りそうになるし」
しばらく沈黙。
「……そもそも、人と付き合った事無いんだけど」
叶は枕を抱きしめながら転がる。
「犬飼、ヴルカーン討伐行くんだよなぁ」
少しだけ表情が曇る。
「伝えるなら早めの方が良いのかな」
だがすぐに首を振った。
「いや、そもそも好きって訳でもないし」
「……多分」
叶は小さく息を吐く。
「でも、助けてくれたしなぁ」
少しだけ頬を掻く。
「まぁ、犬飼が私の事好きなら仕方ないけど?」
数秒後。
「……明日、探り入れてみるか」
――翌日。
「ねぇ、犬飼」
職場の休憩スペース。
犬飼は椅子へ座ったままスマホを弄っていた。
「なんだよ、叶」
「いや、私達ってどういう関係なのかなーって」
犬飼は顔も上げず即答する。
「同僚」
「いや、もっとあるでしょ」
犬飼は少し考え込む。
「あー!!」
叶が身を乗り出す。
「うんうん」
「いざって時の財布兼、書類片付けマシーン」
「社会不適合者がほざくな」
叶が即座にツッコむ。
犬飼はケラケラ笑った。
「いや、もっとこう……あるでしょ」
叶は視線を逸らしながら続ける。
「特別な感情とか」
「特別な感情?」
「なんか、熱い感じの」
犬飼は少し考えたあと、真顔で返した。
「ラッキートリガー引いた時みたいな?」
叶は無言で犬飼を見る。
「……うん、死ね」
「酷くね?」
犬飼が笑う。
叶は呆れたようにため息を吐いた。
「犬飼って恋人とか居るの?」
「は?」
「いや、ヴルカーンと戦うんだし。心配する人とか居るのかなって」
「あー」
犬飼は気怠そうに頭を掻く。
「両親は心配するかもな」
「まぁ、黙ってるから安心しろ」
「ふーん……」
叶は少しだけ視線を逸らした。
「じゃあさ。この先恋人出来るとしたら、どんな人が良いとかあるの?」
「考えた事ねぇわ」
「そうなの?」
犬飼は椅子へ深くもたれかかる。
「よく言うじゃん」
「自分に無いもの持ってる奴に惹かれるって」
「俺に無いものとか無いし」
「倫理観とモラルだろ」
「あるわ」
即答だった。
叶は呆れた顔で犬飼を見る。
「犬飼って本当に天才なの?」
「天才だからなー」
「自分で言ってて恥ずかしくないんですかー?」
「事実述べてるだけ」
「本当にー?」
そんなやり取りを職場で繰り返していた結果。
数日後には、
“犬飼と叶、付き合ってるらしい”
という噂が自然と広まっていた。




