作戦会議
「春」
灯がどこか嬉しそうに、その名前を口にする。
春は資料から目を離さないまま返した。
「なんですか?」
「いやぁ、せっかく名前教えてくれたんだし?」
灯は椅子へ座りながら笑う。
「呼ばないと損かなって思って」
「ヴルカーン戦の記録映像見てるので忙しいんですけど」
春は素っ気なく答える。
モニターには、極寒の世界と化した戦場が映っていた。
灯は画面を覗き込みながら肩を竦める。
「一時間の熱いバトルだったからねぇ」
「全然熱くなさそうですけど」
「周囲はマイナス何百度だしね」
春は映像を止める。
少し考え込んでから、灯へ視線を向けた。
「灯さんって、凍結を自在に解除出来ますか?」
灯が少しだけ首を傾げる。
「……無視かぁ」
だがすぐに笑った。
「出来るけど、なんで?」
春は数秒黙ったあと、淡々と言う。
「周囲に甚大な被害が出ます」
「あと、灯さんと犬飼さんが死ぬかもしれません」
「でも、多分勝てます」
灯の笑みが深くなる。
「なにそれ。聞かせて?」
春は資料を閉じる。
そして静かな口調のまま、作戦を説明し始めた。
「————」
数分後。
灯が引いた顔をしていた。
「うわぁ……」
「それ没にします?」
春は真顔で聞き返す。
灯は少し考え、それから楽しそうに笑った。
「いや、良いアイデアだと思うよ」
「トドメはそれで行こう」
春は小さく息を吐く。
「じゃあ、作戦は俺が考えた事にして」
「二人で行って勇敢に死んでくれたりしますか?」
灯が即座に返す。
「三人で行くに決まってるじゃん」
春の口が僅かにへの字になる。
「……そうですか」
少し間を置いて、春は再び口を開いた。
「凍結解除って、一部分だけ解除とか可能ですか?」
「それは無理かな」
灯はあっさり答える。
「神の力って認識出来ないから、細かい指定が出来ないんだよね」
春は黙って考え込む。
やがて、小さく呟いた。
「なら、俺がやるしかないですね」
灯が春を見る。
春はモニターへ視線を戻したまま続けた。
「役割を分けて、生き残る方に賭けましょう」
数秒の沈黙。
それから灯が笑った。
「……頑張ろっか」
春も小さく頷く。
「はい」




