カタスト
白雪灯は現場に着くなり、軽く周囲を見回した。崩れた街並みの奥、異形の気配がうごめいている。
「カタスト、君は知ってるか。個人で倒してたんだもんね」
何気ない調子で投げられた言葉に、君はわずかに頷く。
「突然現れた原因不明とされている怪物ですよね」
視線はすでに前へ向いていた。
灯は肩をすくめる。
「分かってるでしょ、神様の仕業だって。平和を嫌うからねぇ、願いの質が良くならないから」
「禁句ですよ、その話は」
「天罰なんて信じるんだね君も。今はお兄さんの方かな?」
その一言で、空気が変わる。
「………。」
君の雰囲気が、わずかに歪む。
灯はその変化を楽しむように目を細めた。
「おー…やっぱりいつ見ても凄いね。戦闘能力の再現度は一割程度だけど。それでも敵無しだと思うよ」
動きが切り替わる。灯の癖をなぞるようでいて、どこか歪な再現。
それを見たカタストが、明確に“逃げ”を選ぶ。
一歩、踏み込む。
視界が切り替わる。
首が、落ちていた。
遅れて音だけが追いつく。
静寂の中、灯がぱっと笑顔を弾けさせる。
「よく出来ました!!」
「………。」
呼吸が戻るにつれて、立ち方も元へと戻っていく。
灯はそれを見逃さない。
「お?自分から戻ったんだ。珍しいね」
少し考えるように視線を泳がせて、
「コピー出来てるのは私と君のお兄さんだけしか知らないなぁ。何か条件があるなー」
間を置いて、さらりと続ける。
「強い感情を向ける事でしょ」
「!?」
ほんのわずかな反応に、灯の口元が緩む。
「驚いたー、分かりやすい所も好きだよ」
一歩近づき、覗き込む。
「君は私にどんな感情を向けてるのかな?」
「………。」
「まぁ、話すつもりは無いか」
あっさり引く。
「仕事も終わったし帰ろっか」
背を向け、そのまま歩き出す。




