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エヒト  作者: ルイ
16/31

ジョーカーと解析

「一ノ瀬」

訓練施設へ向かう廊下で、犬飼が君に声をかける。

君は足を止めた。

「どうしましたか?」

犬飼はポケットに手を突っ込んだまま、面倒そうに言う。

「ヴルカーン討伐なんてやめとけ。死ぬ覚悟あるのは別にいいけど、無駄死にだぞ」

君は少し首を傾げた。

「討伐しませんけど?」

「……は?」

犬飼が眉をひそめる。

(もっと頭のネジ飛んでるタイプかと思ってたんだが……)

君は当然のように続けた。

「勝てるわけないじゃないですか。そもそも灯さんを止めないとですし」

「口で言って止まるか?」

「無理ですね。なので悩んでます」

即答だった。

犬飼は数秒だけ黙り、それから肩を竦める。

「……そうか。ちょっと付き合え」

「え? はい」

着いたのは職場の訓練施設だった。

犬飼は中央へ歩きながら振り返る。

「十本勝負」

「えっと……」

「暇潰しの運動だと思え。寸止めはしてやる」

君は警戒しながら施設へ入る。

(こいつがヴルカーン討伐に必要、ねぇ……本当か?)

開始直後、君は白雪灯の身体能力の一部をコピーする。

だが。

「……驚いたな」

犬飼は軽く避けながら呟く。

「………」

君は何も返さない。

「この程度で討伐隊に入れようってのは、おかしな話だ」

言葉通りだった。

速度も反応も、技術も違いすぎる。

君は手も足も出ないまま敗北を重ね、気づけば最後の一本になっていた。

だが、その直前。

君の空気が変わる。

「……身体能力は上がってない、か」

犬飼の目が細くなる。

君は訓練用の長い棒を拾い上げた。

静かに歩く。

一歩、また一歩。

そして、犬飼の間合いへ入った瞬間。

犬飼は即座に踏み込もうとして――止まる。

棒の先端が、喉元へ突き込まれていた。

反射的に後方へ跳ぶ。

(身体能力差をリーチで埋めてる……?)

犬飼の思考が加速する。

(いや、それだけじゃ足りねぇ)

君は何も喋らない。

ただ、視線だけで犬飼を追っている。

(俺の動きを読んでやがる)

(身体能力の差なんざ比較にもならねぇ。それを癖と先読みだけで埋めてきたのか?)

沈黙が落ちる。

やがて犬飼が、小さく息を吐いた。

「……はぁ。負けだ」

「使うつもり無かったのに、使わされた」

次の瞬間。

君の持っていた棒がへし折れる。

視界が揺れた時には、腹部寸前で拳が止まっていた。

冷や汗が背中を伝う。

犬飼はそのまま拳を引きながら、面倒そうに笑った。

「俺ってさぁ、やっぱ天才なんだよな」

「異様な動体視力に反射神経。親から貰った丈夫な身体」

犬飼は軽く首を鳴らす。

「どれくらい丈夫かっていうと、脳のリミッター外しても肉体が壊れねぇ」

君は黙って聞いていた。

「ま、種明かしは終わりだ」

少し間を置いて、君が口を開く。

「……強いですね」

犬飼は鼻で笑う。

「いや、面白いもん見たわ」

そして興味を失ったように踵を返した。

「ヴルカーン討伐は手伝わねぇけどな」

君はその背中へ言葉を投げる。

「なら、止める手伝いをしてください」

犬飼は振り返りもせず、短く返した。

「ヤダ」

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