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覚えてない
「暇だわ」
犬飼がぼやく。
「働けニート」
叶が顔も上げずに返した。
「今日の仕事は終わってる」
犬飼が続ける。
「カタスト倒して、書類を私に押し付けただけでしょ」
叶がため息混じりに言う。
「いいじゃん別に」
犬飼は気にした様子もない。
「よくないから」
叶が短く切る。
一拍。
「それにしても……なんで身体能力が化物なの。何も願ってないくせに」
叶が視線を向ける。
犬飼は肩をすくめた。
「天才なんで」
「うっざ」
叶が即答する。
少し間が空く。
犬飼がふと思い出したように口を開いた。
「なんか、俺たち職場でずっと一緒じゃないか?」
叶は軽く首を傾げる。
「偶然じゃない?」
「そうか?」
犬飼は曖昧に返す。
流れたまま、叶が続ける。
「そういえば、神様がゲーム仕掛けた時、随分慌ててたって聞いたけど」
「なんで?」
一瞬、叶の視線だけが犬飼を捉える。
「……私の居場所、探してたらしいけど」
犬飼はわずかに視線を逸らした。
「昔のことだから覚えてねぇわ」
叶は少しだけ黙る。
じっと見たまま。
「えー、なにそれ」
小さく笑った。




