ヴルカーン
白雪灯が、気軽な調子で声をかける。
「やぁ、犬飼」
犬飼は視線だけを向ける。
「用件は手短に」
間を置かず、灯が続ける。
「ヴルカーンを討伐する。手伝ってほしい」
即答だった。
「無理だ」
「なんで?」
灯は軽く首を傾げる。
犬飼はわずかに息を吐いた。
「カタスト最強が眠ってる。起こす理由がない」
「目覚めたら人類は滅亡するよ?」
「何百年後の話だ」
「明日かもしれない」
その一言で、空気がわずかに張る。
犬飼は視線を細める。
「……何が狙いだ」
灯は笑みを崩さない。
「私の刻印レベルは9。人類でも数人しかいない」
「だからなんだ」
「10に届くためのピース」
一拍。
犬飼の表情がわずかに変わる。
「……ヴルカーン討伐か」
「正解」
軽く頷く。
「べシュルツでもする気か」
「するよ」
迷いのない肯定。
犬飼は短く笑った。
「手伝うと思うか?」
灯は一歩だけ距離を詰める。
「思ってないよ」
間。
「でも、君は来る」
犬飼の目が鋭くなる。
「……理由は」
灯は肩をすくめた。
「私が一人でやるから」
軽く言い放つ。
「負けたら、面倒でしょ?」
沈黙。
犬飼の声が低くなる。
「俺がテメェを殺せないとでも思ってるのか」
灯は楽しそうに笑った。
「いいね、その感じ」
「で、願いは?」
犬飼が切り替える。
灯は即答した。
「神様と聖戦」
空気が一瞬だけ止まる。
犬飼は目を細める。
「……あのゲームで、神を選んだのはお前か」
「違うよ」
少しだけ間を置いて、
「私のパートナー」
沈黙。
犬飼が小さく呟く。
「……一ノ瀬か」
灯は嬉しそうに目を細めた。
「まさか本当にやるとは思わなかった。感動したよ」
犬飼はため息をつく。
「頭のネジが外れてる奴は、一人で充分だ」
「褒め言葉として受け取るね」
軽く返す灯。
短い静寂。
灯が改めて問う。
「それで、どうする?」
犬飼は視線を逸らさないまま答える。
「断る」




